ポプラ社は8月28・29日、「学校・公共図書館向けオンライン選書イベント&セミナー 図書館マルシェ」を開催した。同社の新刊企画説明会や出版各社の商品説明会のほか、各種イベントでGIGAスクール構想、SDGs、道徳科などの話題を届けた。オンラインは地理的時間的な制約がないため、「これまで届けることができていなかった方々に、本の情報を届ける良い機会になった。ぜひ継続していきたい」と同社担当者は話す。
「図書館マルシェ」は、主に学校・公共図書館の担当者を対象とするオンライン選書イベント。7月17日の開催に続く第二弾となる今回は、2日間にわたって開催し、〈セミナーチャンネル〉〈出版社商品説明会チャンネル〉の2チャンネル制とした。申込者数は2日間合計で参加者数の上限に近い約850人にのぼり、アンケートによる視聴者満足度もイベント全体で90%超となった。
また今回初めて出版社29社が参画。同社と合わせ30社の新刊やお勧め商品の説明が聞ける機会となったほか、GIGAスクール構想やSDGsを取り上げた座談会、各種セミナーやトークショーといったイベントも注目を集めた。
28日に開催された座談会「GIGAスクールと学校図書館」には、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主幹研究員/准教授・豊福晋平氏、北海道森町役場・山形巧哉氏、高森町立高森北小学校/高森町子ども読書支援センター司書・宮澤優子氏が登壇した。
豊福氏は「GIGAスクール構想は、PCを日常的に使うことを前提にしている」と話す。調べ学習等の授業での利用はもちろん、デジタル連絡帳やSNSの利用など、授業の外でも使うことが重要になる。「PCはこれまでの“教具”から、“文具”になっていく。そのためには子供たちが日常利用ができるよう、キーボード入力など基本的な能力を身につける必要があるが、その一方で教員の負担は小さくなると考えられる。学習者中心の“文具”化が進めば、学校図書館との関係も変化していく。学校図書館の持つ機能との融合に期待している」。
山形氏は森町役場の情報システム担当。内閣官房オープンデータ伝道師、総務省地域情報化アドバイザーも務める。同町では2年前より教育ネットワークの構築に取り組み、すでにサーバレス環境となっている。校務以外すべてフルクラウドとした。子供たちがスムーズに授業を受けられること、また「生活必需品として普段から使う」ことを前提としている。端末はiPadを選定、WiFiに縛られないLTEモデルとした。教員向けの専用アプリストアも準備中だ。「どんなにセキュリティを強めても、子供の行動力や好奇心は大人の発想を超えてくる。何かを止めるのではなく、“見守る”というネットワークやシステムの構築の仕方もあるのではないか」と話す。
宮澤氏の勤務する高森北小学校は単学級の小規模校。宮澤氏は昨年4月以降、それまでの蔵書管理システムなどの設備に加え、WiFiルーター、電子黒板や書画カメラなどを学校図書館に導入した。「社会で普通に出来ていることが出来るようになっただけだが、それが出来るか出来ないか、では大きな違いがある」と話す。国語の単元「作家から広げる子供たちの読書」では、校内の蔵書に限りがある中、WebOpacなどで子供たちが読みたい本を探し、公共図書館等からの貸出を受けた。子供たちは夏休みの宿題であるブックトークに、タブレットPCも駆使して取り組んだ。以降、読みたい本をネットを利用してチェックし、移動図書館に本の予約やリクエストをする子供たちが続出した。
「図書館でICTを活用していると、それを見た他の教員も興味を持ち、自分の授業と結び付けて考えるようになる。情報センターとして教員の利用に供することも学校図書館の役割ではないか」
後半では、PCが「文具」「生活必需品」となった時、「家に持ち帰るのが重い」といった、生活の中で新たに見えてくる課題も話題となった。山形氏は「理想は3年程度の期間での端末の買い替え。1年目に導入、2年目に活用、3年目に問題解決、4年目に新しい端末にする」と話す。豊福氏は「入学時に保護者がPCを購入しなければならない自治体も出てくるはず。その理解を得るためにも、この3年ほどのICT活用の成果が求められる」と語る。
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「図書館マルシェ」のアーカイブは、同社HPの特設サイト(https://www.poplar.co.jp/toshokanmarche/)から視聴できる。
11月に開催される「第22回図書館総合展」にポプラ社として出展するのに合わせ、「図書館マルシェ」第三弾も開催予定だ。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年9月21日号掲載