横浜市教育委員会は今年3月、令和元年度版「学校図書館利活用の手引~学習センター・情報センター・読書センター機能を生かした学びづくり~」を作成した。平成23年度版「学校図書館教育指導計画 作成の手引~子どもたちの学びを豊かにする学校図書館~」を改訂したもの。ポイントはこれまで重なる部分を持ちながら別建てで示されていた、情報教育における「情報活用能力」との一本化を図った「横浜モデル 情報活用能力 一覧表」を示したことなどだ。
今回の改訂は学習指導要領の改訂を踏まえ2018年に策定された「横浜市立学校 カリキュラム・マネジメント要領」の考え方に基づくもの。
令和元年度版「学校図書館利活用の手引~学習センター・情報センター・読書センター機能を生かした学びづくり~」(以下、手引)の大きな特徴は、それまで学校図書館教育と視聴覚情報教育として重なる部分を持ちながらそれぞれで考えられていた「情報活用能力」について、共通の部分を洗い出して整理し一本化。一覧表とそれに基づく体系表として、「横浜モデル 情報活用能力 一覧表」「同 体系表」と、「横浜モデル 読書活動を通して育成を目指す資質・能力 一覧表」「同 体系表」で示している。
特にこれまで学校図書館教育の視点で作成された「情報活用能力育成」について整理し、横浜市としての「情報活用能力」の捉えを示した「横浜モデル 情報活用能力 一覧表」は、新学習指導要領や、「教育の情報化に関する手引(令和元年12月)」を踏まえ、ICTを活用する情報教育の視点との融合を図っている。
「情報活用能力 一覧表」では、育成を目指す情報活用能力を「Ⅰ 知識及び技能」「Ⅱ 思考力、判断力、表現力等」「Ⅲ 学びに向かう力、人間性等」の三つの柱で整理している。それに基づく「横浜モデル 情報活用能力 体系表」では、この「一覧表」の大分類・中分類・小分類に合わせて、体系を整理。各校種の特性や児童生徒の発達の段階に即して、育成を目指す情報活用能力を系統的に捉えられるようにした。12年間の系統立てた指導を考える際に役立つもので、高等学校の「情報Ⅰ・Ⅱ」につながるよう、小・中学校の学習の見通しが持てるようにする。
特別支援学校及び個別支援学級の体系表は、個人の特性に合わせて活用できるように、3段階のステージで育成を目指す情報活用能力を示し、障害種別に応じて育成を目指す能力も示した。
「横浜モデル 読書活動を通して育成を目指す資質・能力 一覧表」「同 体系表」については、学習指導要領の改訂を踏まえ、読書指導は国語科を基盤としながらも、各教科等での発達の段階を踏まえた指導が求められるとしている。
手引には「『情報活用能力』の育成の指針として、全教職員による全教科等の指導での活用を想定している」とある。改訂にあたっては、2018年8月に改訂委員会を発足。委員会のメンバーは幅広く募集し、市立小中高・特別支援学校の全校種と、学校図書館教育の研究会、情報視聴覚の研究会から参加した。
横浜市ではこれまでも学校図書館活用に力を入れており、「手引」はその中で重要な役割を果たしてきた。各学校が学校図書館教育指導計画を作成する際の拠り所とし、各教科における学校図書館の計画的な利用、「学習センター」「情報センター」「読書センター」の機能の活用、児童生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に、「手引」が活用されることが期待される。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により「学校図書館利活用の手引」改訂の説明会ができなかったため、5月26日以降、手引の説明についてeラーニングシステムで配信した。司書教諭と学校司書が受講しており、「司書教諭等・学校司書合同研修」として位置付けられている。なお横浜市では教職員向けeラーニングシステムの運用が今年4月からスタートしている。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年9月21日号掲載