集英社は昨年11月から、学習まんがの新シリーズ『日本の伝記SENGOKU』の刊行を開始した。人気の高い日本の戦国時代の人物に焦点を当て、小学校3、4年生から読みやすいよう、内容の構成やキャラクター造形、仕様に力を入れている。
日本の歴史の中でも、戦国時代は、大人だけでなく小学生にとっても魅力的なヒーロー・ヒロインが数多く登場する。『学習まんが 日本の伝記SENGOKU』(以下、SENGOKU)は、そうした人物にスポットを当て、現代の小学生が数百年前に生きた人物に共感し、親しめるよう、まんがとストーリー構成を工夫している。
児童書編集部の石川景子編集長は「『SENGOKU』は、小学校3、4年生から大人まで、幅広い年齢層の読者が楽しめるように意識した」と話す。11月の刊行開始以来、すでに6歳~80代の読者から感想が届いているという。
まず力を入れたのは、キャラクター造形。登場人物は小学生が親しみやすいキャラクターデザインとした。表紙の色も主人公の人物像のイメージに合わせて各巻ごとに変え、A5判ソフトカバーとし、8~10歳の子供でも手に取りやすい仕様にした。「それまで歴史に興味がなくても、表紙の絵を見て気に入ったキャラクターを見つけることで、読むきっかけにつながれば」と石川氏。
巻末の「おまけページあそべる口絵」は、武将たちのミニのぼりなどが作れる工作型紙などがあり、コピー使用もOK。遊び心も満載だ。
また同社のこれまでの学習まんがのノウハウを生かし、内容構成も工夫した。戦国時代は複雑な人間関係や多くの戦いがあるが、情報を絞り込み、読者である小学生が歴史の流れを理解しやすいようにしている。
同社では『日本の伝記』(1987年~)、『世界の伝記』(1984年~)、『世界の伝記NEXT』(2010年~)と、伝記の学習まんがを刊行、いずれも定番シリーズとして親しまれている。今回、これまで各シリーズを手掛けた編集スタッフの間で“どうしたら『SENGOKU』を読む3、4年生にとっても、人物の魅力や歴史の流れが伝わりやすいのか”を考え、取り上げる内容を厳選した。ストーリーの流れを立ち止まることなく読めて、1冊を最後まで読み切る楽しさを味わって欲しい、というねらいだ。
監修者である歴史研究家の河合敦氏による解説も掲載。「Q&A」形式とすることで、長い文章が苦手な場合でも、負担なく読めるようにした。
現在、『明智光秀』『濃姫・お市の方・細川ガラシャ-戦国の姫たち①-』『織田信長』『豊臣秀吉』が刊行され、今後6月までに『徳川家康』『武田信玄と上杉謙信』『浅井三姉妹(茶々・初・江)-戦国の姫たち②-』『真田幸村』が発売予定だ。
ラインアップには女性の主人公も並んでいる。戦国時代の女性の記録は多くは残っていないが、史実をもとに、自立した女性として描かれる。
「女の子向けも必ず入れたかった」と話す石川氏。背景として、同社の小中学生向けの児童文庫レーベル『集英社みらい文庫』の『戦国姫』シリーズ(作:藤咲あゆな、絵:マルイノ)が、小学校高学年女子を中心に大ヒットしている実績がある。「『戦国姫』は、小学校高学年女子の興味を新たに掘り起こした。女の子が手に取りやすい戦国時代を扱った読み物は、まだ数が限られていると感じる。『SENGOKU』はさらに低い年齢層のニーズに応えるだけでなく、『戦国姫』をはじめとする歴史ものへの興味関心や、活字への導入にもつながるのではないか」。
「戦国時代に焦点を当てた学習まんがは、自社他社共にこれまでにも素晴らしいものがたくさん出版されてきた。『SENGOKU』はそうした学習まんがの入り口になると考えている」。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年2月17日号掲載
【お詫び】教育家庭新聞 2月17日号紙面にて掲載した当記事につきまして、一部内容に誤りがありました。本ウェブサイトでは当該箇所を削除し、修正したものを掲載しております。読者の皆様、および関係各位におかれましては、ご不快な思いやご迷惑をおかけいたしましたことを、深くお詫び申し上げます。