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図書館

SDGsをテーマに8教科で授業を実践<京都学園中学高等学校>

2020年2月17日
環境・消費者教育

「自分ごと」として捉えるために

京都市は2019年、SDGs先進度調査※で全国1位となった。市全体でSDGsの取組が推進される中、京都学園中学高等学校(佐々井宏平校長)では、授業や委員会活動など学校での活動全体を通して、SDGsを「自分ごと」として考えるための取組を行っている。昨年11月19日に実施された公開研究授業大会では、SDGsを題材に、中学1年・高校1~3年生、8教科での授業が行われた。
※「全国市区・サステナブル度・SDGs先進度調査」日本経済新聞社2019年1月

始まりは「世界一大きな授業」

11月19日の公開研究授業大会には、全国から多くの教育関係者が見学に訪れ、「SDGs」の取組への関心の高さをうかがわせた。中1・高校1~3年の、国語・英語・数学・理科・社会・美術・情報・保健の8教科でSDGsを扱う授業が行われたことに注目したい。

SDGsの取組のきっかけとなったのは、2018年から同校が参加している「世界一大きな授業」だ。世界100か国で同時期(4月中旬~6月)に展開されるキャンペーンで、全世界の子供たちが平等に教育を受けられることを目指している。その目標は国連総会で採択されたSDGsの「4 質の高い教育をみんなに」と共通している。

この「世界一大きな授業」に参加する際の教材となる資料を求める中で、各教員がSDG4だけでなく、SDGs17の目標に共感し、授業で取り組むようになったのは自然な流れだったようだ。

同時期、同校の学校図書館でSDGsに関する教養講座を開催したり、図書館・図書サークルのメンバーで関連するニュースレターを発行するなどしていた。学校図書館が情報の発信源となり、各教科におけるSDGsの学びに広がった。

司書教諭で国語科の伊吹侑希子教諭は「SDGsの17の目標は社会の課題全般を扱っているため、先生方も共感していったのではないか。京都市がSDGs先進度調査で1位になったことで、家庭での話題にもつなげられた」と話す。

国語科で和歌から
ジェンダーを考える

グループ発表のようす

グループ発表のようす

高1・国語科では、国語総合(古典)で5時間の授業を行った。
単元名は「らしさって何? 『歌』から読み解くジェンダー」。SDG5「ジェンダー平等を実現しよう」を扱った。

『万葉集』『古今和歌集』の各4首を取り上げ、修辞を含め学習した。昨年は「令和」に改元され、出典元とされる『万葉集』を扱うことも重視した。

発展学習として、江戸期に賀茂真淵が提唱した『万葉集』の歌風「ますらをぶり」と『古今和歌集』の歌風「たをやめぶり」をふまえ、男はこうあるべき、女はこうすべき、という性別による価値観が、現代にも受け継がれているのか、変化しているのかを考察する。

生徒が木簡に万葉仮名を書き、書道の鑑賞も行った

生徒が木簡に万葉仮名を書き、書道の鑑賞も行った

クラスを男女混合の4人ずつのグループに分け、それぞれに割り振った歌について、新聞記事データベースを用いて「ジェンダー平等」にまつわる課題を探し、根拠・理由・主張の3要素を踏まえ、発表原稿をまとめた。

取り上げた和歌は主に「恋愛」がテーマ。生徒にも身近なこととして受け止められ、自由で活発な意見が交わされた。「ますらを」(=立派な男子)といわれた当時の“男らしさ”や、「通い婚」だった当時と現代の恋愛観の違いや共通点を考え「現代は女性からも告白する」、さらに「ハンカチやティッシュを持っていると“女らしい”と感じる。“ハンカチ王子”は男性がハンカチを持つことが珍しいゆえのネーミングだったのではないか」「イクメンという言葉はそもそも男性が育児をしないからできた言葉では」といった議論に発展した。

さらに教科横断の取組も。芸術科(書道)の坂本智子教諭の手本をもとに、木簡に生徒が和歌を万葉仮名で清書。公開授業では生徒の気づきを、作品と共に発表した。

「課題」を知ることで
社会での取組につなげる

さまざまな教科での取組も授業も紹介する(=表参照)。中1・美術の単元は「アートでSDGs『日常の文具から環境問題を考える』」。

「消しゴムのカスは、燃えるゴミか、燃えないゴミか」を生徒に問いかけ、多くの消しゴムには、燃やすとダイオキシンが発生する塩ビなどを使用しており、環境問題として考えられる。そこで非塩ビ材などを使用した消しゴム版で、共同作品作りを行った。日常の文具を見直しながら、環境問題についてのメッセージをアートで発信した。

高3・数学の単元「平等社会と格差社会」では、投資ゲームを活用したシミュレーションを通して、自由で公正な競争社会では格差が生まれてしまうことについて考えた。

高2・情報科では、IoTブロック(ソニーMESH)を活用したプログラミング教育で、人々の暮らしを豊かにする「モノ」を考案。モノづくりを体験し、「9 産業と技術革新の基礎をつくろう」にもつなげた。

伊吹教諭は「子供たちがSDGsで具体的に取り組めることは、実際にはそう多くない」とし、重要なのはまず“知ること”であり、“自分ごと”として考えることだと話す。「今学ぶことが、社会に出てから仕事を通して、例えば製品開発などで社会の課題に向き合った取組につながる、と生徒に伝えている」。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年2月17日号掲載

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