「第51回全国小中学校環境教育研究大会(千葉大会)」が11月22日に開催された。世界的な環境教育への関心の高まりの中、学校教育では何ができるのか。各地の環境教育の実践発表のほか、会場校となった富里市立根木名小学校の研究授業では、低学年で地域の豊かな自然に親しみ、学年が上がるにつれより広い範囲の環境に関心を高めていく実践が紹介された。(=主催:全国小中学校環境教育研究会)
本研究大会の主題は「21世紀『環境の世紀』への提言 持続可能な社会づくりのための環境教育の推進-環境教育によって育む学力と環境保全意欲-」。環境省大臣官房環境経済課環境教育推進室の三木清香室長は「ESD(持続可能な開発のための教育)が反映された教育はまず小学校から始まる。学習者が気づき、調べて考え、実行できるようになることを目指す」と話す。2019年度はGAP(ESDに関するグローバル・アクション・プログラム)の最終年にあたり、来年度には新たなESDの国内実施計画が策定される。
文部科学省初等中等教育局の藤枝秀樹視学官は「新学習指導要領における環境教育を考える」と題し講演を行った。
東京都大田区立大森第六中学校(松尾廣文校長)は、知識や技能を「活用する力」に重点を置き、あらゆる教育活動の中でそれを育むための仕掛けを教科単元ごとに組み込んだ。地球的な課題を解決するための学習として、①食品ロスを減らす、②卒業制作-SDGsの18番目を考える-など、計4つの観点から全校で取り組んだ。①では生徒会の保健給食委員が中心となり、家庭科の授業で食の問題として、残食量の多い「魚・豆・海藻」の中の1つを取り入れた給食の献立を考案する授業を展開した。②ではSDGsの18番目として「すべての人に愛を」を3年生全員の投票で決定。理由と今自分にできることを曼陀羅図にして、卒業制作とした。
滋賀県草津市立渋川小学校(清水康行校長)では、環境教育のねらいを「地域の身近な自然やくらし、文化について学ぶことを通して、人と人とのつながりを創出し、ふるさとへの愛情や誇りを深めること」としている。滋賀の郷土料理を活用した、5年生の環境教育プログラムを開発研究。さらに郷土料理学習を発展させ、6年生は北海道や沖縄など10県の小学校とテレビ会議による遠隔地交流を行い、各地の郷土料理作り体験などを実施。各県の暮らしや文化を尊重する態度と郷土への愛着の深まりを生むことにつながった。
全校児童による環境学習の成果は『渋川ESD(いいまち・しぶかわ・だいすき)ミュージアム』として毎年開設している。
東京都小中学校環境教育研究会では、誰もが実践できる指導計画例を作成している。今回の指導計画テーマを「『脱プラ生活』~海洋マイクロプラスチック問題について考える~」として、第3学年「総合的な学習の時間 『替えて代えて変える未来』指導計画例」を作成し、研究員の各校で指導実践を深めている。2020年2月7日に、東京都町田市立南成瀬小学校で発表会を行う。
研究主題を「『自ら学び、共に考え、進んで自然に働きかける』児童の育成」とし、1・2学年の生活科と3~6学年の理科を中心に環境教育に取り組む。学区内には根木名川が流れ、ゲンジボタル等が見られる支流もある自然豊かな場所。一方で2018年5月の児童の実態調査では「根木名の自然」と言われて思いつく言葉を5個以上書けるのは、3・4年生が10%前後、5・6年生が20%強程度に留まった。
同校では特に重視する「環境をとらえる視点」を『多様性』『生命尊重』『保全』の3点として指導を開始。翌年5月の調査では「根木名の自然」の言葉を5個以上書ける児童が6年生で50%を超えるなど、各学年で大幅に増えた。
今回の研究授業は1年「あきとなかよし」、2年「ねこなのたからはっけん」、3年「動物のすみかをしらべよう」、4年「季節と生き物(秋)」、5年「流れる水のはたらき」、6年「生物と地球環境」。
5年生は根木名川の様子を、通常時と増水時の写真、台風15号・19号の映像も見るなどして、大きく印刷した川の写真に児童一人ひとりが気づいたことを付箋で示した。水の三作用に関心を持ち、周囲の環境の結びつきについて考えた。
教育家庭新聞 新春特別号 2020年1月1日号掲載