学校図書館は、「静かに本を読む図書館」から「活発に議論できるメディアセンター」になることが求められている。学校図書館を「メディアセンター」や「アクテイブラーニングスペース」にするなど、役割を見直す学校も増えてきている。11月12~14日、神奈川県横浜市で開催された「第21回図書館総合展」(主催=図書館総合展運営委員会)で、(公社)全国学校図書館協議会は「学校図書館セミナー2019」を実施。「ICT教育時代の学校図書館~『主体的・対話的で深い学び』をどう創るか~」をテーマに聖心女子大学非常勤講師・榎本竜二氏が講演した。
デジタル情報だけではなく、あらゆる情報、あらゆる手段を用いることができるのが図書館だ。榎本氏は「主体的・対話的で深い学び」に向けた子供たちの学習ステップとして「習得」「活用」「探究」の3段階を提案した。
主体的な学びでは、まずは学習したことをすぐにプレゼンしてみる、という取組がおすすめだ。アウトプットする時、児童生徒は人に伝えることを前提に自ら学習するようになり、知識の再構成のためのノートやメモの取り方をするようになる。ここで起こるのが「知識の再構成--頭の中の活動」だ。この時のメモやノートは、板書を撮影する行為とは全く異なる。
自分のノートをみて後日説明できるか、きちんとメモがとれていたかなどを振り返ることで、単なる記憶が、知識を活用する「知恵」になる。「アウトプット」中心にすることで、主体性を獲得し、「知識・技能」の定着と確認、つまり「習得」に結びつく。
「習得」したことを「活用」するためには、実生活での課題を設定して解決することが有効だ。結果から考えるようにすることが役立つ。例えば算数で答えが「3」になる式は、「1+2」「4-1」「9-6」すべて正解だ。実生活でも500円を上手に使い切っておやつを買う、といったことが多いはずだ。
授業では協働学習の形をとることが多いが、まだ不慣れな教員もいるようで、協働学習形態であっても、子供たちは議論ではなく、単に答えを探している活動を散見する。協働学習で重要なことは、他者と自分の答えを比較したり、お互いの考えを知り、意見の調整や知識の集約を行うなどの、考えの再構築である。
効果的な議論にも、学習内容や疑問点の共有、到達点の共有が必要。それはICT機器を使って画面を共有するだけでも効果を発揮する。
「探究」では、社会との結びつきを見据えた問題発見と解決行動、問題解決のためのプロジェクトレベルの活動が求められる。高等学校では「総合的な探究の時間」も始まる。しかし「探究」や「課題研究」を指導できる教員は不足している。
そこで、学校図書館の活用が有効になる。インターネット検索では見つけられない情報、ある時点では正しくても今年は違っている情報の見方や判断の方法について、子供たちは学ばなくてはならない。
そのためには、「探究」や「課題解決」を展開しやすい学校図書館整備が必要だ。
2016年に通知された「学校図書館の整備充実について」別添「学校図書館ガイドライン」でも、学校図書館の利活用による情報活用能力の指導について触れている。
今年6月28日に交付・施行された「学校教育の情報化の推進に関する法律」の基本理念では、「情報及び情報手段を主体的に選択し、活用する能力の育成を図ること、またデジタルと、デジタル以外の教材や、体験学習等とを適切に組み合わせ、多様な方法で学習を推進する」としている。
本法律に則り、学校図書館もICT化を図り、図書資料もコンピュータも使える「情報センター」「学習センター」にならなくてはならない。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年12月2日号掲載