本を通じて、科学の面白さや奥深さ、また科学者たちの生き方や考え方を伝える事業「科学道(かがくどう)100冊2019」がスタートした。中高生を主な読者対象とし、科学に関連した100冊を選書。書店・公共図書館・学校図書館で特設コーナーを設けて展開するほか、学校の授業で活用できるブックリストとしても注目される。東京・練馬区の山崎学園 富士見中学高等学校(佐藤真樹校長)でも、「科学道100冊」を活用し、高等学校の探究型読書の授業を行っている。
理化学研究所(理研)と編集工学研究所は、9月26日、「科学道100冊」の2019年度版を発表した。
本を通じて科学者の生き方や考え方、科学の面白さや素晴らしさを届けることを目的としたこの事業。2017年2月に最初に実施した「科学道100冊」では、科学者の思考プロセスを6つのステージで取り出し、100冊の本と共に紹介した。書店・図書館・教育機関に、共通の看板やPOP、ブックレットを提供し、科学道100冊の本棚作りを展開、428か所で実施された。同年10月には「ジュニア」版も同様に展開。全国757か所(うち教育機関138校)で実施された。
そして今回、中高生をメインターゲットに、同事業が毎年企画されることになった。その第1弾が「科学道100冊2019」だ。50冊は「テーマ本」として、毎年異なる角度で本をセレクト。今回は「元素ハンター」「美しき数学」「科学する女性」がテーマだ。他の50冊「科学道クラシックス」は、ずっと読み継いで欲しい本として固定したブックリストとする。詳細=特設サイトhttps://kagakudo100.jp/
高校2年生がこの2学期に取り組んでいるのは、探究型読書ワークショップ「本を使って新しい自分に出会う」。科学道100冊を活用した編集工学研究所によるプログラムに、同校の宗愛子司書教諭が、自校の学びに合わせてアレンジ。各クラスの担任がHRの時間を使い、8コマの授業を行う。
授業のねらいは「本を使って新しい学び方を身に付ける」こと。複数の情報を関係付けて、自分なりの新しい「問い」を作る。探究学習で重要な「問い」を育てる活動だ。科学道100冊の導入は、疑問を持つ・情報を収集し組み合わせを考える・新しい問いを作る、といった科学者の思考プロセスに学ぶねらいがある。
授業は3つのステップに沿って進める。ステップ①本の帯作り…科学道100冊の中から1冊を選び、「目次読書」を行ってキーワード、ホットワードを書き出し、KHマップを作成する。次に1~2冊を選び、自分の視点で関連づける。本の帯にまとめる。ステップ②三冊棚を作る…自分の関心と関係しそうな本で三冊の本棚を作る。三冊を関連づけ、新しい問い(仮説)を作る。ステップ③エア新書…三冊棚をもとに、新書本の企画と目次構成を考える。
取材日に授業に取り組んだのは文系クラス・世界史選択の生徒40人。この日はステップ①の「自分の関心に寄せた本を2冊選ぶ」活動。まず生徒が書架を0類~9類までくまなく歩き、気になる本を確認する。担任の岩井貴央教諭は「これまであまり読まなかった分野の本も見よう」と生徒に語りかけた。
次に気になった本を各自2冊選び、KHマップを作成。2~3人のグループ内で発表を行った。
本の中身はまだ読まない。表紙と目次からの連想で、本の内容と自分の関心を関連づける。普段と違う読み方をすることで、自分なりの「見方」に出会う。次の授業では、本の帯づくりに取り組む予定だ。
同校では現在、科学道100冊をヒントに、「富士見100冊」も企画中。“7つの扉”として本をグループ分けし、本を読む手掛かりをつかみやすくする予定だ。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年10月28日号掲載