家庭科の学習は5、6年生の8割以上の児童が「好き」で、その最も多い理由は「調理の基礎が学べる」から--全国小学校家庭科教育研究会が毎年実施している「第5・6学年児童の家庭科学習に関する調査」の平成31年度の結果がこのほどまとまった。実習を通して料理や作品を作ることが、家庭科の学習を好きになる要因になっていると考えられる。同研究会の曽我部多美会長は「学んだことを家庭でも実践することで、さまざまな学びをもたらし、他教科の学びにも結び付く」と話す。
調査は2018年12月~2019年2月に、全国47都道府県・政令指定都市から抽出した小学校5年生5827人、6年生5795人の児童計1万1622人と、家庭科指導教員516人を対象に行ったもの。授業についての感想や家庭での実践などについては児童が直接回答している。児童の主な回答は次の通り。
家庭科の学習について、「とても好き」「わりと好き」と肯定的な回答をした児童は5年生89%、6年生84%。その理由で最も多いのは「調理の基礎が学べる」、次いで「布を使って物の作り方が学べる」「家庭生活に役立つことが学べる」の順となっている。
一方で「あまり好きではない」「好きではない」と否定的な回答をした児童は5年生11%、6年生16%。「製作するのが苦手」「衣服の手入れの仕方が苦手」といった理由が多い。技能について苦手意識をもつ児童への個別指導をはじめ、生活経験を豊にするために家庭との連携も取り入れた学習指導の工夫や、調理や製作など学んだことが日常生活や家庭生活に役立つ、という実感を持たせることが重要になると考えられる。
「家庭科の学習を通して、何がどのくらいできるようになったか」の15の設問のうち、14項目で「よくできるようになった」「わりとできるようになった」と肯定的な回答が70%以上を占めている。特に「包丁を使う」「ガスコンロを使う」「ゆでる」といった調理に関する設問では5・6年生ともに90%以上が肯定的な回答に。一方で、学んだことを家庭で実践しているかは項目によって開きがあり、「ゆでる」「針を使う」「ミシンを使う」「ボタンつけ」「手洗い洗濯」では、「できるようになった」と「家庭で実践している」の差が30~50ポイント程度あった。
家庭科の学習が「家庭での生活で役に立っていると思うか」という質問では、「家庭生活でとても役に立っている」「わりと役に立っている」と肯定的な回答をした児童は、5年生86%、6年生86%。また「将来(大人になった時)役に立つと思うか」については、「とても役に立つ」「わりと役に立つ」と回答したのは5年生96%、6年生95%。家庭科の学習が、今の生活に結びついていることを理解し、将来大人になった時には、今より役立つと感じている児童が多いようだ。
児童の家庭生活での実践はどうなのか。普段の家庭生活に関しても調査している。
「家族のために、家庭の仕事を分担しているか」という質問では、5・6年生共に「いつもしている」27%、「時々している」48%、「あまりしていない」18%、「まったくしていない」が7%。家族の一員として、児童が家庭の仕事に取り組めるよう、学校と家庭との、より一層の連携が求められる。
また新学習指導要領では、少子高齢化社会に対応するため、「A 家族・家庭生活」で、異なる世代の人々との関わりを重視している。「地域の幼児や低学年の子供たちと遊んだり活動したりすることがあるか」という質問では、「ある」「時々」と回答した児童は5年生65%、6年生62%。「地域の高齢者といっしょに行事に参加したり、活動したりすることがあるか」は、「ある」「時々」は5年生40%、6年生38%となった。
家庭科の学習が「好き」「役に立っている」と回答する児童の割合は高い。ただし、学んだことを実際に家庭で活かしているかどうかは、子供たちも忙しくなった現代では厳しい状況のようで、「学習を通してできるようになったこと」と「家庭での実践」の回答の差にも表れている。
家庭科の学習は各教科の学習を補い、実際の生活に学びを結びつける役割を果たす。また世の中が便利になる中で、製作や調理などは手指の巧緻性を養う手段にもなる。家庭生活の中での実践はさまざまな学びをもたらす。
また「異なる世代の人との関わり」については家庭内でさまざまな世代の人達との触れ合いがあればよいが、難しい時は地域の幼児や高齢者と触れ合う機会を学校が作ることも今後求められるのではないか。
小学生の時期から、いろいろな人と共に自分が暮らしていることを直接学ぶ時間を持つことに意味がある。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年10月28日号掲載