(公社)全国学校図書館協議会(以下、全国SLA)では8月30・31日、東京・文京区の学校図書館センターで「指導主事研修会 カリキュラムマネジメントを進める教科横断的な視点~ICT時代の学校図書館活用を見据えて~」を実施した。全国SLAによる、学校図書館を担当する指導主事を対象とした研修会は今回が初めて。講義のほか、自治体における研修プログラムの立て方についての演習が行われた。
全国から自治体の指導主事を中心に、学校の管理職、教員らが参加した。初日は文部科学省から、昨年10月の組織改編により学校図書館を所管している総合教育政策局地域学習推進課 図書館・学校図書館振興室室長補佐・荒木正寛氏の代理で図書館振興係専門職・青木信也氏が出席。学校図書館の整備充実、新学習指導要領における学校図書館に係る記述、第5次学校図書館図書整備等5か年計画、2020年度の概算要求などについて解説した。
講師は青山学院女子短期大学・堀川照代教授、東京学芸大学非常勤講師・全国SLA学校図書館スーパーバイザー・福田孝子氏。
テーマは「教科横断的な学びによる『情報活用能力』と『読む力』の育成」。近年の学校図書館施策を解説した。2016年の文部科学省「これからの学校図書館の整備充実について(報告)」の学校図書館ガイドラインでは「校長が館長」とする記述が「インパクトがあった」と堀川教授。今年6月28日に施行された「学校教育の情報化の推進に関する法律」についても触れ、児童生徒に求められる「情報活用能力」の育成は、図書館利用指導の延長上で考えることができる、と話す。
資質・能力の育成は教科横断的であることから、学校図書館が核となって、カリキュラムマネジメントに取り組んでいる学校事例を紹介。他にも、読みに困難を感じる子供たちのための環境整備、デジタルコンテンツの種類や評価といった、学校図書館における最新のテーマを取り上げた。
学校図書館は教育のインフラであり、授業改善に活用できること、また司書教諭と学校司書との協働が重要である点などを確認した。
テーマは「教育委員会や学校図書館支援センターの可能性」。
先行事例として、荒川区教育センター学校図書館支援室学校図書館長支援員・神澤登美子氏は、同区の司書教諭・学校司書の研修会の実際や、司書教諭と学校司書の打ち合わせ時間の確保などの施策を解説した。
他の自治体の例では、
▽松江市…司書教諭を1校につき2人配置し育成
▽市川市…各校が教科書に沿って授業を進める中、単元に必要な図書資料の団体貸し出し時期が集中しないよう、教育委員会で調整
▽図書館活用のハンドブックやツールの提供など…鳥取県「学校図書館活用ハンドブック」、袖ケ浦市「学び方ガイド」、神戸市「神戸市モデル」、浜松市立図書館「学習支援パック」 …などがある。
コンクールやビジョンの作成、モデル校の指定や運営計画、訪問指導など、さまざまな取組がある。学校図書館の活用状況の調査や、チェックリストの作成、広報活動なども重要だ。
研修会を実際に行う場合、具体的な検討事項として何があるのか。担当部署や対象、時期や頻度、講師について、参加者が具体的なイメージを描けるように解説した。
情報交換会では、参加者が3~4人ずつグループになり、それぞれが所属する自治体の取組について、「自分の地域でよくできている、他の地域にもお勧めする方法・とりくみ」「自分の地域で、もう少し何とかしたい点」について話し合った。
31日には①校長を対象とした研修会をグループで企画する、②自身の自治体の学校図書館活用推進のための3カ年計画を各自で考える、の2つの演習を実施した。
指導主事を対象とした今回の研修会は、学校図書館の活用に関する基本的な理論や知識をはじめ、現場で活かすための実践的な内容となるように企画された。本研修会の内容を各地域に持ち帰り、研修などに活かすことで、各地域の学校図書館活用を推進することがねらい。
全国SLAでは、今後指導主事を対象とした同様の研修会の実施を、全国の自治体に呼び掛けている。プログラム内容、講師紹介についても相談に応じる。
問合せ=03・3814・4317
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年9月23日号掲載