小平市(東京都)の「なかまちテラスティーンズ委員会」は、10代の子供たちにお薦めしたい本を選ぶ第1回「なかまちテラスティーンズ委員会大賞」として、「僕は上手にしゃべれない」(椎野直弥/著 ポプラ社)に決定した。同委員会の構成メンバーは、地域の小中高校生たち。子供たちの社会参画の第一歩とも言えるこの活動は、図書館、公民館、学校など地域の連携により実現した。
小平市立仲町図書館と公民館の複合施設「なかまちテラス」と、そこから徒歩3分の場所にある小平市立小平第一中学校をベースに活動する「なかまちテラスティーンズ委員会」(以下、ティーンズ委員会)は、平成30年5月に発足した。同月の1回目の委員会には小学6年生5人、中学生8人、高校生5人が集まった。
最初の活動は、なかまちテラス内に「ティーンズ委員会コーナー」を設置すること。6月、7月と話し合いを重ね、コンセプトを考え、本を選び、並べ方を工夫したコーナーが完成した(=写真左)。9月には「ティーンズ委員会大賞」の選考がスタート。自分たちと同じ10代の人に読んで欲しい本を選出し、11月29日、大賞を決定する5回目の委員会を迎えた。
最終候補作品として残ったのは「チーズはどこへ消えた?」(扶桑社)、「自閉症の僕が跳びはねる理由」(エスコアール)、「僕は上手にしゃべれない」の3冊だ。
司会を務める小平第一中学校の栗林昭彦校長は「どうして10代の皆に読んで欲しいのか、自分たちが納得できる本を選ぼう」と語りかけた。
小中高校生の全体討議では「『チーズ…』は、明るいし、前向きになれる」「以前アスペルガーの同級生がいた。『自閉症…』を読んでいれば、接し方がわかったと思う」「『ぼくは…』は物語なので読みやすく、心に入りやすい」等、“大賞を決定する”という大きな目標を前に、上級生にも遠慮のない意見が積極的に上がった。
投票の結果、大賞は「ぼくは上手にしゃべれない」に決定した。1月31日に公民館ホールで発表会が行われる。
小平市仲町公民館は平成29年に「なかまちテラス事業企画委員会」を設置した。公民館を地域のコミュニティづくりの拠点にすることが目的だ。周辺自治会代表、教育委員会の学校支援コーディネーター、図書館関係者、高校の副校長や中学校長、保育園長らが委員を務める。その中で発案されたのが「なかまちテラスティーンズ委員会」だ。なかまちテラスの魅力的な活用、仲町図書館の10代の来館者増、中学生の読書推進、小中高生の交流といった各方面のニーズが合致した。
ティーンズ委員会に参加する子供たちの募集にあたっては、なかまちテラス周辺の小中高校に直接呼びかけたほか、仲町図書館でも積極的にチラシを配布した。委員会の実施日は、各校の学校行事や試験などと重ならないように調整した。
今年度の活動を通じ、「読書の活性化、社会参画意識の向上が図れた。これをさらに発展、継続していくことが大切」(布昭子・小平市学校支援コーディネーターネットワーク会長)。来年度は市内で広く子供たちに呼びかけ、第2期の「ティーンズ委員会」を発足させる予定だ。同取組は平成29年度から文部科学省が推進する「地域学校協働活動推進事業」の事例としても注目される。
教育家庭新聞 新春特別号 2019年1月1日号掲載