新学習指導要領における家庭科教育は「主体的・対話的で深い学び」の推進により、「生活をよりよくしようと工夫する資質・能力」を育成することを目指している。全国小学校家庭科教育研究会会長で東村山市立回田小学校の曽我部多美校長は、「家庭科は、他の教科での学びを実生活につなぐ『窓』」と語る。
内容構成が変わります。「A 家族・家庭生活」「B 衣食住の生活」「C 消費生活・環境」の3つになりました。これまで別々の内容構成として扱われていた“食事と調理の基礎”、“衣服と住まい”は、“衣食住”の1つにまとめられました。
持続可能な社会の構築として、「消費生活」「環境」が大切に扱われるようになったことも特徴です。
「C 消費生活・環境」では、自立した消費者の育成を目指して、新たに「買物の仕組みや消費者の役割」を学ぶことになりました。11月30日には岡山市で「第55回全国小学校家庭科教育研究会 全国大会」が開催されました。「C 消費生活・環境」での研究授業も行われ、多くの先生方が参観し、注目度の高さがうかがわれました。
2022年から成人年齢が引き下げられ、賃貸契約やクレジットカードの作成など、さまざまな契約も18歳から可能になります。そのため同時に巧妙な手口の消費者トラブルに巻き込まれる可能性も高まります。
小学校の家庭科では「約束と契約の違い」や「消費者センターなどの問題発生時の対策方法」「消費者の役割」などを学習し、中学校との系続性が図られています。
「環境」については「B 衣食住の生活」との関連なども図りながら、実践的に学習します。
新学習指導要領では「何を学ぶか」や「どのように学ぶか」がより重要視されています。
例えば、「調理の基礎」で扱う「ゆでる材料」は、青菜やじゃがいもを扱うこととしています。お湯に入れてゆでるのか、水からゆでるのかは、食材により異なります。それぞれを扱い、違いを明らかにして、科学的な理解を目指します。
「A 家族・家庭生活」には、「幼児又は低学年の児童や高齢者など異なる世代の人々との関わり」という内容が新たに加わりました。少子高齢社会の進展や家庭の機能が十分に果たされていないといった状況に対応するためです。
ここでは、地域での実践的な活動や、学校行事等とからめ、学んだことを実践することが必要です。地域の清掃活動に参加したり、登校時に通学路の見守り活動をしてくださる地域の方に感謝を伝える会を開催することなども考えられます。
異年齢との交流は意義が深く、1~6年生の縦割り活動では、高学年の児童は低学年の児童に優しく接するようになります。幼児や高齢者などさまざまな人々と協力し、助け合って生活することが大切であることについて理解できるようにすることで、よりよい生活を築くためには、協力などが必要であることに気付くようになります。
新学習指導要領では、「他教科との連携」が求められています。家庭科は、他教科での「抽象的な学び」を生活に生かす力に変えることができます。家庭科は、いわば学校での学びを実生活に生かすための「窓」ともいえます。各教科の学びを、実生活に繋ぐことができるのが家庭科です。
例えば、算数科で「もののはかり方」を学んだあと、家庭科で実際に「調味料の重さや体積を計測すること」ができます。社会科で「農業」を学んだあと、家庭科で「食材の産地や値段、流通などに触れること」ができます。
国語科でも可能です。例えば、「記号の使い方」を学んだあと、家庭科で「洗濯時の衣類のマークを確認する」「ごみの分別時に、瓶やプラスチックの種類を示したマークを見る」などの学習をすることで、生活の中で生かせるようになります。
現在、「カリキュラムマネジメント」が重要視されています。「家庭科と各教科との関連性を上手に結びつける」「学習内容の連続性や連系性を明確化する」ということです。教科の学習内容を関連付けて組み替えるカリキュラムの作成が、「深い学び」の構築につながります。
小学校では、家庭科専科の教員人数は減少傾向にあります。しかし、担任が家庭科を教えることで、他教科や生活との関連付けがしやすいという利点もあります。
家庭科の特性を生かし、すばらしい実践を先生方に生み出してほしいと思います。
教育家庭新聞 新春特別号 2019年1月1日号掲載