授業での学習内容と家庭生活とのかかわりが深く、保護者・家庭との連携が大切だとされる家庭科だが、学習が家庭生活で「役立っている」と回答した児童は5年91%、6年89%。大人になった時「役に立つと思う」が5年97%、6年96%だった。全国小学校家庭科教育研究会は、5・6年児童を対象に教科への好感度や家庭生活での実践などについて「全国調査」を実施している。
調査結果は昨年11月に石川県で開催された第54回全国大会で発表された平成29年度調査のもの。昨年2月、全国47都道府県・政令指定都市から抽出した小学校の5・6年児童1万860人と家庭科指導教員520人が対象。授業の好感度や家庭での生活実践、将来への意識などは児童が直接回答している。
授業で学んだことが家庭生活でどの程度実践されているかを調査結果からみると、コンロや包丁を使ってご飯・みそ汁を作る、いためる・ゆでるなど料理に関することは比較的よく実践されている反面、ミシン・針を使う、ボタン付けなど被服に関連する実践は低調だったことが、5・6年共通の傾向としてみられた。家庭・保護者との連携を図る上での課題として明らかになった。調査の結果は次の通り。
家庭科の学習が「とても好き」「わりと好き」を合わせて5年90%、6年84%だった。理由で多かったのは「料理の仕方が学べる」「家庭生活に役立つことが学べる」「布を使って物の作り方が学べる」などだった。
「あまり好きではない」「好きではない」の理由では5・6年共に「製作するのが苦手」「衣服の手入れの仕方が苦手」が最も多く、「ミシンの使い方がわからない」が次に多かった。
将来、大人になった時役立つかは、「とても役立つ」が5年72%、6年68%、「わりと役立つ」を合わせると5年6年共に96%という高い肯定率だった。
ガスコンロを使う、季節や気温に合わせた衣服の調節など、学習を通して「よくできた」「わりとできた」など肯定的な回答が、掲げた14項目の全てで80%~90%以上だった。「できるようになった」という達成感を得た児童が多いようだ。
同項目を家庭生活での実践につながっているのかを比較すると、表の通り内容により開きがあることがわかった。
実践が低調だったのは針・ミシンを使う、ボタンを付ける、といった被服の関連で特に多くみられた。授業の「好きではない」理由の一つに「ミシンの使い方がわからない」が上げられていたことと関連がありそうだ。
一方「予算や品質などを考えて買い物をする」「省エネルギーなど、環境を考えて生活する」などは5年より6年が多く実践している。他教科との教科横断的な内容であることから、学習の進度の影響と思われる。
同調査では家庭科指導教員509人に指導状況等に関する調査も実施。「消費者教育」「食育」「環境」などの充実に、家庭科教育が役割を果たしているかを聞いた。
消費者教育では「十分できている」「できている」を合わせ69%が肯定。「あまりできていない」「できていない」は31%。食育は「十分」「できている」が93%に上り、「あまり」「できていない」は7%。環境は「十分」「できている」が77%、23%が「あまりできていない」だった。
指導上の課題は「生活経験の不足」(37%)、「個別指導の対応が不十分」(32%)、「教員の技能不足」(16%)など。その解決には家庭との連携やT・Tの活用、教員研修の機会を増やすといった対策が必要となる。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年11月19日号掲載