東京都・江戸川区立松江小学校(堀越和子校長)は、平成25年度に新校舎が落成。新しくなった学校図書館だったが、より授業で利用しやすいよう、28年度に再度見直しが図られ、成果を出している。
松江小学校は、一昨年開校140周年を迎えた伝統校だ。平成25年度、区内の小学校として初めて校舎を全面新築した。
新しくなった学校図書館は2階にあり、廊下側の壁は全面ガラス張りで、廊下から中の様子を見渡せる。隣にはPCルームを設置。学校図書館とPCルームは部屋の中でもドアを通じて出入りが可能で、調べ物の際にPCと図書資料を両方活用するのに便利だ。
廊下を挟んで学校図書館の反対側は吹き抜けとなっており、1階の主に低学年が利用する「えほんのもり」コーナーを覗くことができる。学校図書館、PCルーム、えほんのもりコーナー、それら全体が同校の「メディアセンター」となっている。
堀越校長が同校に赴任したのは26年。当時の学校図書館は、新しく綺麗だったものの、「何か違和感を感じた」という。特に気になったのは書架の配置。館内正面にあるカウンターに平行する形で高い書架が並び、その向こう側にある児童用の机が見えづらく、安全面でも改善が必要だった。
一方で、同区が推進する「読書科」も26年度に完全実施となり、区内の小中学校全104校(現在)に導入されることになった。学校図書館活用教育はますます重要になっていく中、「新校舎として環境整備されたことで、学校図書館も先進モデルにならなければならない、という使命感もあった」と話す。
28年度に同区では初めて、10校に学校司書を配置することになり、同校にも週2日配置された。同時に学校図書館スーパーバイザー(当時)の藤田利江氏の協力も得て、5月から学校図書館の新たな整備が始まった。
まず課題だったカウンター前の書架の移動を決めた。他校から不要となった書架を譲り受けるなど工夫もしながら、館内のレイアウトの図案を作成。カウンター前の書架は低くし、視線を塞がない方向に設置することで、その奥の机やPCルームが見渡せるようにした。工事に必要な予算を確保し、夏季休業中に書架の工事と図書の移動を完了。2学期からスムーズに使えるようにした。保護者・地域ボランティアの数も増え、読み聞かせ、本の修理、分類通りに書架を整えるなどの整理もスムーズになった。
「当時、学校司書が本と児童や教員を上手に繋いだ」と堀越校長。読み聞かせや本の紹介が活発になり、学校図書館との関わりが増えていった。ただし読み聞かせだけでは子供たちの主体的な学びには結びつかないという課題もあった。
学校図書館整備と活用に大きく影響したこととして、27年度より取り組んでいた同校の「総合的な学習の時間」の研究が挙げられる。「地域」「学校の歴史」「環境」など各学年でテーマを決め、少しずつ成果を上げていた。29年度に学校図書館の環境が整ったことで、図書資料が活用されるようになり、学校司書へのレファレンスの回数も増えていき、より一層学習が深まった。蔵書の配分比率も変化し、読み物だけでなく、調べ物で活用できる図書資料が求められるようになった。
こうした探究学習は、子供たちの主体的な学びに結び付いていった。この年の後半には、学校司書が不在の際も児童が学校図書館を活用する姿がよく見られるようになったという。比較すると、28年度の年間の図書の貸出数が6370冊に対し、29年度は7606冊(12月末時点)に増え、レファレンス数も32件から90件に増えた(同)。全国学力・学習調査も以前より好結果になったほか、地域コンクール「図書館を使った調べる学習コンクール」の応募点数も、28年度の38件から29年度には76件まで増えた。「総合的な学習と学校図書館活用により、考える力が高まったのではないか」と堀越校長は語る。
平成30年度がスタートした4月4日、同校では研究全体会の第1回目として「読書科と図書館活用教育」の研修を実施。全教職員が学校図書館を活用し、児童の主体的な学びを推進するため、今年度も力を注いでいく。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年3月19日号掲載