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図書館

学校図書館をもっと活用する

2018年4月23日
学校図書館特集

新学期がスタートした。異動などを契機に新たに学校図書館の担当となった教員は、自校の学校図書館の環境を確認する時期でもある。「授業で活用する」視点で学校図書館をチェックすれば、求められる蔵書や資料が見えてくる。実践事例として、学校図書館の環境整備を進める傍ら自校の研究課題を深めていくことで、図書資料の活用とともに、児童の学びを発展させているようすを紹介する。

授業で活用するための準備を進める

「学校図書館法」(昭和28年制定)では、「(学校図書館は)学校の教育課程の展開に寄与する」としている。授業で活用できる学校図書館であるかどうかが重要であり、そのための整備のポイントについて、(公社)全国学校図書館協議会(以下、全国SLA)竹村和子事務局長に聞いた。

夏休みも視野に入れて蔵書や館内をチェック

学校図書館を授業で活用するために、何から始めたらよいのだろうか。
「まずは図書館の蔵書をひと通り眺めてみましょう」と竹村氏。その際のポイントは、①払出し(処分する)対象の本はないか、②図書はNDC(日本十進分類表)に則って配架されているか、③新聞や雑誌の配備状況、④情報ファイルコーナーの有無、⑤書架見出しや館内の案内表示などがあるか。

①は情報の古い本、背の文字が消えかけている、破損や汚損がある本が払出しの対象になる。

②について、図書はNDCに則って、左から右へ配架されているかどうか、単位書架ごとに配架されているかどうか確認する。NDC順に配架することで、知りたい情報を効率よく見つけることができるようにする。

③新聞や雑誌は、本では得られない最新情報が提供されている。新聞配備は、文部科学省による第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」(※Ⅰ)では、小学校等1紙、中学校等2紙、高校等4紙を目安としている。

雑誌は、様々な情報が詰まっているので、内容を吟味して学校図書館メディアとする。部活の種目ごとに欲しいところだ。

④情報ファイルは、新聞の切り抜きや、地域資料や博物館、資料館のパンフレットなどを集めて、件名ごとに分類したもの。

市販の図書資料にはない情報を補う。新規で設ける場合、ファイルボックスを4~5個置くところから始められる。今の時期、大型連休に出かける教職員や子供に呼びかけ、各地の資料を収集しやすい好機だ。児童生徒には、切り取ったり、処分する場合もあることを事前に伝えておく。

⑤授業での活用を促すためには、書架見出しや館内の案内表示が必要だ。書架見出しや棚見出しは、「400 自然科学」といった、単位書架の上に掲示するほか、棚見出しとして「伝記」「動物学」「農業」など、その棚にどんな本があるのかを、児童生徒にわかりやすく伝える。館内の案内表示は、どの場所にどの分類記号の書架があるかがわかる見取り図だ。

棚見出しや案内表示は近年、イラストを入れたりカラーで表示して、文字以外の表現で図書資料の場所を分かりやすく工夫したユニバーサルデザインが推奨されている。

蔵書は、後日さらに詳細を点検したい。「授業で活用できるかどうかを見ることが大切」と竹村氏。蔵書数や配分比率は、文部科学省と全国SLAがそれぞれ計算式を制定している(※Ⅱ)。また小学校でも3桁の分類記号が必要だ。例えば同じ4類(自然科学)でも、「481」は「一般動物学」、「486」は「昆虫類」で配架されるからだ。

蔵書の確認は前年度の3月にまでに行われていたはずの作業だが、まだ実施されていないようであれば、取り組む必要がある。ただし新学期スタート時は多忙でもある。「今日は書架のこの分類記号を見る、などと意識して、少しずつでも確認します。学校司書と協力して行うと良いでしょう。並べ替えが必要な場合は、図書委員会やボランティアの募集なども視野に入れて、夏休みを利用します」。

利用案内を周知して本に触れる機会を増やす

整備された学校図書館は、読書だけでなく、調べ物などで学習の幅を広げ、より授業に活用しやすくなっているはずだ。

児童生徒が学校図書館をスムーズに利用するための「オリエンテーション」の実施(4月頃)や、自然と学校図書館に集まる仕掛けもしたい。4月23日の「子ども読書の日」や、夏休み前、学校独自の「読書週間」を設けるなど、子供たちが本に触れる機会を作ると良い。

授業支援の準備も着手したいことの1つ。各学年・教科の年間計画を各教員からもらい、直近の授業内容で図書資料を活用できる部分をチェック。該当する本を揃えたり、ブックリストを作って各教員に情報提供する。

揃えた本は、学校図書館にコーナー展示して児童生徒にアピール。教職員と児童生徒、両方に働きかけることが大切だ。

【5つのチェックポイント】
①払出し対象の本はないか
②図書資料の配架について
③新聞・雑誌の配備状況
④情報ファイルコーナーの有無
⑤書架見出し、館内の案内板の有無


Ⅰ 第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」
平成29年度から第5次計画がスタート。文部科学省により、地方財政措置として単年度で学校図書館図書の整備に約220億円、学校図書館への新聞配備に約30億円、学校司書の配置に約220億円が、予算措置されている。


Ⅱ 蔵書数と配分比率について
児童生徒数に沿った計算式を下記HPで紹介
■全国SLA「学校図書館メディア基準」
www.j-sla.or.jp/(平成12年3月21日制定)
■文部科学省「学校図書館図書標準」
www.mext.go.jp/(平成5年3月制定)

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年4月23日号掲載

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