文部科学省が「子どもの読書推進に関する法律」(第一次)を策定したのは平成13年。茅野市(長野県)はそれに先駆けて読書推進活動に取り組んできた。行政と市民の公民協働による活動を皮切りに、現在に至るまで、常に新しい取組で全国から注目を集めている。
平成10年秋、市がまちづくりの施策として「福祉・環境・教育」に重点を置く中、「心の教育」が課題となっていた。その具体策として挙がったのは、読書を教育の柱に据えることだった。矢崎和広市長(当時)の後押しも大きかった。
平成12年7月、「乳幼児期からの『ことばとこころを育てる読書活動』を進める」ことを目的とする「読書の森 読りーむinちの」が発足した。行政と市民の公民協働による組織であることが大きな特徴だ。保育士や幼稚園・学校教員だけでなく、企業関係者などのさまざまな立場のメンバーで構成。市の学習企画課(現・生涯学習課)に専任の職員を配置した。同年8月、赤ちゃんに絵本を贈る「ファーストブック・プレゼント活動」が早速始まった。
現在、茅野市こども読書活動応援センター長代理を務める林尚江氏も、発足時からのメンバーの一人。当時は市内小学校の教員で、市の司書教諭会の代表も務めていた。「人材も豊富で、さまざまな部会が誕生した」と振り返る。「読み聞かせ実践部会」「ブックリスト部会」「パネルシアター部会」といったテーマごとのもの、「市役所部会」「保育園部会」など所属する組織単位のものなど最も多い時で12の部会が活動。市内全域で読書推進を担っていった。
市が力を入れた施策に「朝の読書」も挙げられる。平成8年から一部の学校で実施していたが、読りーむinちのが14年から実施した「朝読見学会」は、市全体に定着することに結び付いた。メンバーと地域のボランティアや保護者が1年間かけ、市内全ての幼・保~高校を回って朝の読書を見学し、教員との懇談会も行った。こうして定着した朝の読書は、学校図書館の役割や重要性を再認識することにもつながった。
18年4月、それまでの推進成果を踏まえた第一次「茅野市こども読書活動推進計画」が策定され、同時に「こども読書活動応援センター」も開設。行政計画として、読書推進活動が位置づけられた。
茅野市の読書推進に大きな役目を果たしてきた「読りーむinちの」は、平成29年、ひとつの節目を迎えた。組織を見直し、次の3つを活動の中心に据えた。①「ファーストブック・プレゼント活動」出生時と4か月検診時の2回②小学校に入学する児童に本を贈る「セカンドブック・プレゼント活動」③広報誌の発行。
現在のメンバーは95人。こども読書活動応援センターに事務局を置き、活動している。(3月19日号へ続く)
*参考文献
「読書の森づくり 子育ては本との出会いから 茅野市の実践」(読りーむinちの編集委員会/編 信濃毎日新聞社刊 2007年)
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年2月19日号掲載