新聞を教材として活用する「NIE」を展開する(一社)日本新聞協会は「第3回NIE教育フォーラム」を2月3日、都内で開催。子供の読解力を育むにはどうすべきか、学校図書館の役割にも焦点をあて、講演や実践報告が行われた。
日本図書館情報学会副会長を務める倉田教授は「大学生と情報リテラシー」をテーマに講演。情報リテラシーの一環として大学1年生に「レポートの書き方」を教える倉田教授。レポートの書き方が分からない大学生が問題になっているという。「高校の教科『情報』で情報活用能力を身に付けてきているはずだが、コンピュータリテラシーも大学で教えなければならないのが現状」と語る。
専門的な学術論文を読み取れないことがレポートを書けない原因の一つで、それを補うのが新聞記事だ。異なる立場の意見が一つの記事に載っていることが利点であり、新聞記事を読むことでデータベースの使い方を学ぶなど情報探索方法を身に付けられる。
普段から新聞を読んでいる大学生は少なく、多くはニュースアプリから情報を取得している。「アプリでは自分が興味を持った情報しか読み取らない。新聞が的確な情報を発信するにはどうすべきかが課題」と語った。
大阪の清教学園中・高等学校は平成14年に蔵書数約5万8000冊の総合図書館リブラリアを開館。その館長を務める片岡教諭は「学校図書館と連携したNIE」をテーマに報告した。
リブラリアの授業利用は中学で総合学習の週1時間、高3の探究科で週2時間。探究科では生徒が自ら課題を見つけ、調べた結果を卒業論文としてまとめる。情報源となるリブラリアは探究学習を支えている。
朝日新聞や毎日新聞などの全国紙の新聞を読むことができるほか、小中高校向け新聞記事データベース「スクールヨミダス」を導入。PCを使って調べる課題に則した新聞記事を検索している。生徒へのアンケートでは「本に載っていない情報が出ている」などの理由で、78%の生徒が新聞データベースの検索は使いやすいと回答している。
アンケートによると新聞を読む中学生は全体の4分の1程度。日頃から動画を視聴する生徒が増え、文字の多い新聞や図書から離れる傾向にあるという。
瀬谷西高校の黒崎教諭は、前任校である湘南台高校での取組を中心に「主権者教育とNIE」をテーマに報告した。
「18歳の段階で何ができるようになるかを考えると、社会に参画できる資質・能力を育成するには、キャリア教育や主権者教育が重要」と語る。
湘南台高校は総合的な学習の時間の名称を「シチズンシップ」とし、他教科とも連動しながら主権者教育を推進。1年生の段階で新聞の読み方講座を行い、複数紙を読み比べることで、新聞社ごとの特徴や紙面構成、記事の種類などを学んだ。早い段階で新聞の読み方を身につけることで、後のディベートやプレゼンテーションの際の情報収集に役立てることがねらい。
主権者教育では、時事的・論争的な社会課題について、生徒が解決を目指して話し合うアクティブ・ラーニングの視点を重視して活動した。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年2月19日号掲載