中学生がより幅広く、質の高い読書をするためには、本に興味を持ち、手に取るよう促す工夫が求められる。千葉県・市川市立第七中学校(藤平一成校長)では1月10日、市の図書館部の研究授業として、読書のアニマシオン研究会の岩辺泰吏代表を授業者に迎え、生徒が本を「読んだつもり」で紹介する、ブックトークの実践を行った。
「読書のアニマシオン」とは、本や図書館にいざなう様々な活動の総称。今回、岩辺氏が中学1年生の国語の授業で実践したのは「つもり・デ・ブックトーク」。生徒は事前に本を読んでくるのではなく、用意された本の紹介文を読み上げる形でブックトークを行う。チームで話し合い、読んだことのない本を紹介する活動を通して、自分や同級生がその本に興味を持ち、実際の読書に繋げることがねらいだ。
授業前の準備としてクラスの生徒を5人ずつのチームに分けた。生徒は「野獣精肉店」「大友肉屋妙典店」「ざんざんあー」等チーム名を決めた。
授業は学校図書館で行われた。チームごとに着席し、各テーブルに1部ずつ本のリストが配られる。リストには40冊の本について、書名・著者名・出版社名・内容紹介文・表紙のカラー写真が載っている。前方には、布で覆い隠された書架を用意。リストが配られると布が外され、リストの実際の本の表紙が見えるように並べられていた。
生徒はリストを見てテーマを1つ考え、それに沿って紹介する本を4、5冊ずつ決める。時間は15分。テーマは内容からでも表紙の写真からでも、自由な発想で決めて良い。書架から本を手に取って検討もできる。
テーマが決まったら、発表の際に掲示するため、画用紙に記入する。今回は4チームが「生き物」をテーマにしたほか、「命」「辛い道のりを乗りこえる音楽」「世界の情景を描いた本」も挙がった。
岩辺氏の助手役の生徒が大きなサイコロを振り、指名されたチームが前に出て発表する。サイコロで順番が決まるため、生徒は楽な気持ちで待つことができる。
「大友肉屋妙典店」チームのテーマは「生き物」。選んだ本は『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎/著 光文社新書)、『わたしの庭』(今森光彦/写真・文 クレヨンハウス)、『ウミガメと少年』(=左表参照)、『レッド・フォックス』(チャールズ・G・D・ロバーツ/作 桂宥子/訳 福音館書店)、『大好き!旭山動物園』(多田ヒロミ/著、NHK出版)。5人が一冊ずつ本を手に持ち、リストの紹介文を「本を読んだつもり」で読み上げる。各チームの持ち時間は5分。質疑応答はしない。50分の授業で全チームが発表を終了した。
授業後、生徒からは「(リストに)いろいろな本があり、テーマをもう少し考えたり、本を読んでみれば、もっとたくさんのテーマが生まれると思った」「テーマが違えば、本の見方も変わっていて面白かった」「自分が読まないような本を知ることができた」等の感想が寄せられた。なお後日他の1年生7学級でも、担当の国語科の教員により、同じ実践が行われた。
ブックリスト(一部抜粋)
…ほか計40冊 |
今回の授業は市川市の図書館部の研究授業であり、終了後、小・中学校の教諭、学校司書による意見交換会が行われた。
岩辺氏はこの授業のねらいの1つを「手軽にできるブックトーク」と話す。今回は同校の増田栄子教諭が生徒たちに読んで欲しい本を選出、解説文をまとめてリストを作成した。そうした準備が難しい場合でも「小学校の国語の教科書の巻末にある、本のリスト等を使うことで、同様の実践ができる。ぜひ活用して」。また「小学生が実践する場合、使用する本は3冊でも良いのか」という質問には「3冊でも1冊でも良く、2人で組むなど、子供や時間の状況に合わせて、柔軟に取り組んでほしい」と語った。
同校は朝の読書や図書を活用した学習に積極的に取り組んでいることから、生徒たちは読書に抵抗が少なく、本に慣れ親しんでいる。ただし、生徒が自分で選ぶ本はライトノベル等が多いという。同校の牛尾直枝学校司書は「今回の授業を通して、リストに掲載されているような、いわゆる〝良書〟に関心を持ち、読書の幅が広がることを期待したい」と話す。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年2月19日号掲載