回答者:野口武悟(専修大学 教授)
インクルーシブ教育が推進される今日、すべての学校で障害のある児童生徒(以下、障害者)が学んでいます。障害の有無に関係なく利用できる学校図書館の実現が必要です。
障害者差別解消法では、国公立学校に対して障害者への合理的配慮の提供を義務づけています(私立学校に対しては努力義務)。合理的配慮の提供とは、障害者一人ひとりのニーズに基づき状況に応じた変更や調整を校内の体制や費用などに負担のかかり過ぎない範囲において行うことです。(1)貸出の期間延長や冊数拡大、(2)資料の代読(対面朗読)、(3)アクセシブルな資料(点字、拡大文字、音声、デジタルなど)の提供などが考えられます。
合理的配慮の的確な提供には、環境づくり(基礎的環境整備)が欠かせません。まずは、基礎的環境整備からはじめましょう。(1)館内設備のバリアフリー化の推進、(2)読書補助具(リーディングトラッカー、書見台、拡大鏡など)の導入、(3)アクセシブルな資料の収集などが挙げられます。既製品を購入しなくても、自作できるものもあります。
基礎的環境整備は、一朝一夕に成せるものではありません。「学校図書館経営計画」に位置づけて計画的・継続的に進める必要があります。また、特別支援教育コーディネーターなどとの情報やノウハウの共有が重要です。「チーム学校」の視点で取り組むことが有効でしょう。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2016年4月25日号掲載