各教科での学習で学校図書館を活用するために必要な要素とは。蔵書が揃っていること、学校司書によるレファレンス、児童生徒が学習できるスペースがあること、そして各教員が積極的に活用するための充実した研修や、教職員の情報共有も重要となる。市川市立第七中学校は、各教科での学校図書館の利用が活発だ。大規模校(全校生徒843人)として、各教員はどのように取り組んでいるのだろうか。
平成16年、第七中学校は建て替えにより「市川七中行徳ふれあい施設」として、公会堂や保育園等を併設し生まれ変わった。その際、学校図書館も「図書館メディアセンター」として新設。吹き抜けがあり広々と明るく、2クラス同時に使用できるようになった。
増田栄子教諭は20年度から25年度まで同校の司書教諭を勤めており、「学校図書館を授業で利用するには、教員の決断が必要だった。目の届かないところで生徒が課題をやらない可能性もあるから」と話す。各教科での学校図書館の活用が広がるには、各教員の力が大きかったという。
きっかけは、平成21・22年 度に文部科学省研究指定「学び方を学ぶ場としての学校図書館機能強化プロジェクト」を受けたことに溯る。それまで一部の教員の指導による調べ学習が行われてきたものの、読書センターとしての活用が中心だった。
指定校となり、講師を招き、学校図書館を活用した実践について教員の研修を実施。1年目は講義のみ、2年目からはワークショップを取り入れた。これは現在も毎年夏に実施している。ワークショップで制作した教員の調べ学習の成果は「先生の調べ学習」として学校図書館に掲示しており、生徒が注目するだけでなく、他校の教員からも評価が高いという。
研究指定により学校図書館での授業が推奨されたことを背景に、各教科の教員が学校図書館活用の研究に関わるようになった。研究主任の曽根浩一教諭は社会科、松山真奈美教諭は理科の教諭だ。司書教諭は今年度から国語科の小松くるみ教諭が担当している。
研究主任2年目の曽根教諭は、「社会科は、特に政治や経済など難しい用語が多い。調べ学習は生徒が自分で調べるので、授業の導入に行うことで学習の定着が図れる」とその良さを語る。
大規模校である同校は各学年8学級、特別支援学級4学級の計28学級ある。教員それぞれが忙しい中で、特別に情報交換の場を持つことは難しいため、日常的な教員同士のコミュニケーションを密にして、授業づくりの情報を共有している。
そして曽根教諭が「その存在なくしては、図書館での調べ学習はできない」と語るのが「学校司書」。授業で必要な本は、高桑弥須子学校司書が準備する。
市川市は小・中学校と公共図書館が連携し図書資料の貸し借りができる上、市立図書館が隣接する同校では、学校司書が直接出向き図書の貸し出しを受けることも。高桑学校司書は常勤で、学校図書館での授業の際に必ずいることが、教員の大きな味方となっている。
同校では読書推進にも力を入れており、10数年前に導入された毎朝10分間の「朝の読書」を積み重ねている。昨年度まで小学校に勤務していた高桑学校司書は、「中学生はとにかく時間がない」と小学生との違いを語る。部活の朝練と放課後の練習、委員会活動などがあり、読書の時間を確保するのは困難。そんな中、朝の読書は生徒たちの貴重な読書時間だ。
教育課程が変わる時に、朝の読書をやめた方がいいのではないか、という案も教員内であがったが、更に1年継続し、その効果を各学年で検証した。
結果として、朝の読書は継続となった。「例えば朝読の代わりに朝自習としてプリント問題を配付したとしても、教員の指導が必要な生徒にとっては、ただ10分が過ぎてしまう」(増田教諭)。だが読書であれば、生徒の誰もが自分の好きな本を読み、落ち着いて一時間目の授業に入れるのだ。その利点は大きい、というのが多くの教員の意見だったという。
調べ学習と朝読に力を入れる同校の学びは、本と共に存在している。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2015年2月16日号掲載