子供達が行きたくなる、明るくて温かい学校図書館があり、全ての教員が授業で図書資料を活用していれば、子供達はより多くの本に触れ、本から得る学びも大きくなるだろう。「楽しむ読書と学ぶ読書」をテーマに学校図書館の活発な利用を促している大和市立林間小学校は、平成24年に子どもの読書活動優秀実践校として文部科学大臣表彰を受賞。また同市の「ふれあい教育実践研究推進校」の指定を受け、教科における学校図書館の活用にも取り組む。
大和市は学校図書館の活用に積極的に取り組んでいる。同校の三浦文夫校長は「学校図書館の利用が活発になったきっかけの1つとして、行政主導による読書推進活動が挙げられるだろう」と話す。
同市は平成17年に「大和市子ども読書活動推進計画」を策定。学校図書館についてはウエルカムプラン(学校図書館施設整備事業)として、市内の小学校全19校の学校図書館をリニューアル。さらに平成22年度に全小学校、23年度に全中学校に学校図書館司書を配置。平成25年度からは学校図書館スーパーバイザーが各校をサポートする。
林間小学校も、平成21年に学校図書館をリニューアル。司書教諭の資格を持ちリニューアルを担当した今野智美教諭は、その際「居心地の良い、温かい空間作り」を目指したという。
パステル調の壁面や、カラフルで丸みのある書架、カーペットスペースなどを採用。その効果として、来館児童数と図書の貸し出し冊数が増加した。
さらに翌22年には平井早苗・学校図書館司書が着任。週5日勤務し、授業で活用する図書資料の準備も可能になった。単元で使える資料を平井氏が選び、各教員に提案する取り組みが始まり、徐々に授業での学校図書館の利用について、各教員の理解が深まっていった。
学校図書館を授業で活用するためには「選書」が重要。同校では全ての教員が選書に携わる。校内の研究会では学習指導案や授業作りについて選書も含めて話し合い、授業の前や並行読書、単元終了後にそれを深めるものなど、どのタイミングでどんな図書資料が必要か、学習の目的に合うものを丁寧に検討する。
教員は公共図書館等で必要な図書資料を探し、購入の参考にする 。
「学びのゴールの設定によって、必要な本も変化する。前は授業で使えるかという視点で本は選ばれていなかった。実際に授業で使う教員が選書に関わることで、授業で活用されるようになった」と今野教諭は話す。
9類に偏っていた蔵書は、現在では0~8類も増え、特に国語、理科、総合的な学習の時間で図書資料の利用が活発だ。
さらに以前は春と秋の年2回だった図書の購入を、今年度から年10回程に分け、月1回実施。そのため2つ3つ先の単元にも購入が間に合うようになった。
同校は児童数925人の大規模校だ。学校図書館は2クラス同時の利用は難しいため、授業で活用する図書資料は、ブックトラックに入れ、教室で使用することも多い。「あらかじめ教室に本を運ぶことで、授業中に教室でその本が使え、すぐ手に取れる」と今野教諭は話す。
イベントで現在力を入れているのが「読書まつり」と「家読(うちどく)」。「読書まつり」は、年に1回、1か月間程度実施する。4年目となる今年は10月に行った。ビンゴを用意して児童がゲーム感覚で本を読みたくなるように工夫し、達成すれば冬休みの本の貸し出しを1冊多くできる券「+(たす)1券」と、しおりをプレゼントした。
「読書まつりはその期間のイベントで終わらないよう意識している」と今野教諭。例えば「+1券」の配布は読書まつり後も学校図書館に訪れるきっかけになると同時に、「家読」にも繋がる。
「家読」は冬休みと夏休みに行う。初めて実施した平成24年の冬休みは、児童全体の38・5%の取り組みに留まったが、今年度の夏休みには82・8%まで高まった。
読んだ書名等を記入する「家読シート」の配布が功を奏している。
様々な取り組みの積み重ねが、学校図書館と教員と児童を結んでいる好例と言えそうだ。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2014年11月17日号掲載