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図書館

学校図書館訪問記(1)中央大学附属中学校・高等学校編(東京・小金井市)

2014年7月21日
学校図書館訪問記

本が必須の教育課程 蔵書は約17万冊 約2割が社会科学系

平野誠 司書教諭

平野誠 司書教諭

第1回目は中央大学附属中学校・高等学校図書館。建物・規模・運営・情報機器環境いずれも充実を誇る。05年度から専任司書教諭を務める平野誠教諭に話を聞いた。

■年間1000時間利用

本館正面入りロ

本館正面入りロ

同校には1978年に建てられた本館と、2010年の附属中学校開時に開館した分館の2つの図書館がある。運営にあたるのは、本館・分館兼務で専任の司書教諭1名(99年度より専任化)、司書1名、事務スタッフ5名、係教諭6名。

本館1階は、3クラスが授業を行える閲覧スペースがあり中高両方が利用、分館は特に洋書の充実を図っていることから、中学校の英語の授業で活用されている。現在、図書館での年間授業時間数は合計約1000時間となっている。

■課題図書は教科の授業

分館の入ロとカウンター

分館の入ロとカウンター

文学的作品を中心とした読書指導は、図書館では行わない。国語科の授業では「課題図書」として、中学校3年間で60冊、高校3年間で100冊が課される。読んで終わりではなく、定期試験では関連した出題もある。日頃から本に親しむベースがあり、その上で様々な教科において日常的な調べ学習等図書館を活用する機会が多いのだ。

学校図書館の利用時間が多い理由の一つは、同校の学習に本が欠かせないためだろう。

■学習を重視した蔵書構成

図書館本館の中央閲覧席は72席あり、上部は吹き抜けで広々している。 取材時は高校3年生が卒業論文を執筆中だった

図書館本館の中央閲覧席は72席あり、上部は吹き抜けで広々している。 取材時は高校3年生が卒業論文を執筆中だった

同校では、教育課程全般で課題解決型学習や探究活動を重視している。それは蔵書の配分比率にも反映される。本館・分館併せて約17万冊。年間約4000冊を購入し、そのうち本館はここ数年、「社会科学」の3類が23・9%と高く、「文学」の9類が11%と低めだ。(全国学校図書館協議会の学校図書館メディア基準では、中等教育学校の場合3類:11%、9類:19%)。

そして高3では総合的な学習の時間を使い、学びの集大成として1万字の卒業論文を執筆する。そのホームベースは学校図書館で、空間とコンテンツを提供する場となる。

■検索の環境を整える

図書館で行われる授業の時数が飛躍的に増えたのは、PCが60台増えて80台になった06年度。授業時間は前年度の360時間の約1・5倍の508時間。授業中1人1台PCを使用でき、蔵書の検索やWebを使った調べものがスムーズに行えるようになった。

所蔵資料検索システム(OPAC)を備えた同校の図書館HPも、学習を大きく後押ししている。独自に構築されたOPACシステムにより本の検索が容易となり、日々、事務スタッフが検索キーワードの追加など書誌データの整備を行う。

平野教諭はOPACシステムに力を入れた理由を、「資料検索の時間は、授業開始の10分程度に収めたい。本を探すことが目的ではなく、探し出した資料をもとに学ぶことが目的」と話す。

HPからは他にも、辞書・辞典や新聞など、有料デジタルコンテンツ8種の検索が可能。国立国会図書館や生徒の居住地の公共図書館にもアクセスできる。卒業後に多様な図書館を活用できるよう、導くねらいもある。

■授業活用できる図書館

教員が授業で活用しやすい図書館をつくるポイントとして、平野教諭は「打合わせを強要しない」「気軽に利用できる」「10分で利用法を教えられる」「図書館に来てくれたことを喜ぶ」の4つを挙げる。

「資料や設備なども必要だが、図書館利用の敷居を低くすることで、教員が”図書館を使えば面白いことができる”と思える雰囲気も必要。教員がどんな図書館を求めているのか、学校の方針など、自校を熟知した上で、図書館をどういう風にするのか考えることが大事。本校の場合も、図書館に求められる機能を追求していった結果、現在の形ができた」。

 

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2014年7月21日号掲載

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