自らの疑問や課題について、公共図書館や学校図書館を使って調べ、まとめた作品を募集する「第20回 図書館を使った調べる学習コンクール」(主催=公財・図書館振興財団)の受賞作品が決定した。2月25日に都内で行われた表彰式では、調べた出発点や、その過程などが紹介され、受賞者の知的好奇心や調べる楽しさが伝わるものとなった。
図書館の利用促進と調べる学習の普及を目的とした「図書館を使った調べる学習コンクール」は、20回目を迎えた今回、過去最多の応募総数となり、小学生から大人まで、国内外から7万7453点の作品が寄せられた。地域コンクール審査と、のべ110名の審査員による審査を経て、入賞30作品、優良賞132作品、奨励賞234作品、佳作1098作品が選ばれた。
部門は小学生から大人までを対象とした「調べる学習部門」、中・高校生が対象の「調べる学習英語部門」、学校や公共図書館に所属する個人・団体が対象の「調べる学習・指導・支援部門」、優れた活動を行った地域コンクール主催団体に贈られる「図書館を使った調べる学習活動賞」がある。
学年に応じた力が身に付き磨かれる
審査員長の銭谷眞美氏(東京国立博物館館長)が総評し、「各テーマともユニークでバラエティに富んでいた。写真の配置なども工夫し、楽しく掘り下げており、作者の達成感や満足感も伝わってきた。本コンクールは色々な『なぜだろう』という疑問を調べることでの読解力、『どうしてこうなったか』という深い思考力、言語力・表現力が磨かれる。その力を各学年に応じて、ぜひ蓄えて欲しい」と述べた。
表彰式では受賞者が作品への思いも語った。
「ボストン美術館でのアンケート調査では、様々な国の人から意見を聞くことができた」と話す広瀬由子さん |
「調べる学習部門」高校生の部で文部科学大臣賞を受賞した広瀬由子さん(女子美術大学付属高等学校2年・東京都)の作品は「美術館展示と陰翳礼讃論~ろうそくの明かりと美術館展示の可能性を考える~」。日本美術を鑑賞するのに’正しい展示照明’は、制作時代と同じであるべきではないかと考え、調べた。
「自分と同じ主張の人がいないか調べたら、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃論』があった。作品に金や銀を使うのは、ろうそくの光を反射する意図があるとわかり、ろうそくで作品を鑑賞できるが少なく、残念に思った」という。アメリカ・ボストン美術館で来館者に照明についてのアンケートをとるなどして検証した。
文部科学大臣賞受賞者はほかに、小学生の部(低学年)=籾山大空さん(東京都墨田区立両国小学校2年)、同(中学年)=上田愛友里さん(東京都江戸川区立葛西小学校3年)、同(高学年)=広瀬一樹さん(千葉県袖ケ浦市立昭和小学校6年)、中学生の部=臼井律華さん(埼玉県三郷市立早稲田中学校3年)。
「まだ見ていない2つの国宝土ぐうを見てみたい」という吉野秀さん |
また観光庁長官賞を受賞したのは小学生の部(低学年)の吉野秀さん(青森県八戸市立吹上小学校2年)。作品「国宝 合しょう土ぐうはご近所さん 土ぐうはこんなにすごかった!」で、土偶と土器との違いや、何のために作られたのかを調べた。表彰式では「土ぐうにひげがあって、男の人かと思ったら、女の人だった。他の土ぐうを調べたくなった」ときっかけを語った。図書を調べ、三内丸山遺跡や長野県茅野市の国宝土偶を見に行き、土偶作りも体験したという。
「国連生物多様性の10年日本委員会」賞は、小学生の部(中学年)・畑中実さん(東京都荒川区立第一日暮里小学校4年)が受賞した。
今回91の自治体で実施された地域コンクール。その中から「図書館を使った調べる学習活動賞」を受賞したのは、板橋区・板橋区教育委員会、三郷市教育委員会、八千代市立中央図書館。
三郷市教育委員会学校教育部・参事兼指導課長の檜垣幸久氏は「三郷市が『日本一の読書のまち』として得たものを、外にも発信していこうと考えている」と挨拶。年々応募数は増え、今回3154点となった。男女小グループの作品や、家族旅行で博物館を訪れるなど、多様な取組があったという。親子で調べた虫について専門紙で取り上げられた例を挙げ、「コンクールに取り組まなければ、味わえない経験も得ている」と語った。
【2017年3月20日号】