日本の「読書のアニマシオン」は、1997年に、スペインのモンセラット・サルト氏の著書「読書で遊ぼうアニマシオン-本が大好きになる25のゲーム」(柏書房)が翻訳・出版されたことから始まった。これを契機に、各地でアニマシオンの研究会が誕生した。読書のアニマシオン研究会代表の岩辺泰吏氏は「アニマシオンは人生を楽しむための応援歌」と語る。楽しむ活動を通して子供と本や資料を結び付け、知的好奇心を喚起したり、深めたりし、世界への目を開かせる。
来日したドミニク氏は、9月7日~10日に東京・港区の明治学院大学を会場に、講演会とワークショップを開催。読書のアニマシオンについて、どのような進め方をし、方法があるか紹介した。主な参加者は公共図書館司書や、学校の図書館担当者。9日の講演会のようすを伝える。
フランスの公共図書館では、マリオネットの上演や、芝居など子供用の「語り」を通じて、また朗読などの大人向けの活動を通じて、本や資料への興味を喚起する。
図書館司書が行うものを挙げると、①本の紹介 ②朗読 ③お話の会…「はじめ・中・終わり」と構成して本を紹介する。例えば「世界の物語」は、世界地図を広げ、小さな人形を動かしながらアフリカへ→アフリカに関する本を読む、と各地を訪れながら本を読む。④ICTを活用したお話の会 ⑤展示の案内 ⑥コンクールを組織する ⑦本の中の調べものについて、がある。
実践では椅子の並べ方を含め、どのように場所を配置するかも重要だ。
実践例① 思春期の子供に本を紹介する。年齢層に合った本を、どんな順番に紹介するか、テーブルにわかるように綺麗に並べる。読みたいという気持ちを起こすために、小説の最初を読む、なぜ気に入っているかわかるように読む、などの方法がある。
実践例② 様々なものを「指標」として置き、その後ろに「隠れているものは誰?」と当てさせる、9~12歳の子供に向けた活動。講習会の会場には、リンゴや、帽子、水槽などが並べられた。参加者が「リンゴ」を挙げると、ドミニク氏はリンゴを上から落としてみせた。参加者はそれについて質問し、何(誰)がその「指標」(リンゴ)の背景に隠れているか、当てていく。答えは「ニュートン」。ニュートンについての本や、物理の本への導入とする。子供が参加する場合、人名を知らない場合が多い。まずはどんな分野についての指標なのか当てさせ、なぜリンゴが落ちるのか、それを発見した人は…と本に興味を向かわせる。
実践例③ 展示は、ワークシートを用意することで、子供たちがその前を素通りすることがなくなる。ワークシートの内容は絵を線でつなぐなど、シンプルに。展示物はどこから見てもよい(順を追わなくてもよい)、展示物どうしの間隔を空けることで、混雑せずに見られる。学校のクラス単位の受け入れも可能だ。
今回紹介した実践例をドミニク氏は「あくまでも例」と語る。アニマシオンに「こうでなければならない」形はない。
ドミニク氏によると、フランスの公共図書館は「文化センター」の役割を果たしており、すべての図書館でアニマシオンが行われているという。図書館は子供と大人のセクションが分かれていたり、イベントスペースがある場合もあるが、そうしたスペースがなくても、書架のすぐ横でワークショップが開催されているという。地元の図書館は、子供たちにとって居心地の良い場所だ。
ドミニク氏が関わる公共図書館では、学校のクラスを定期的に受け入れている。幼稚園用、小学校用のアニマシオンのプログラムの年間計画を立て、地域の幼稚園や学校に提案。その中から教員はカリキュラムに役立つものを選ぶ。また、教員からの提案を受けて、図書館が企画し実施する場合もあるという。こうした取組も、子供と図書館を繋いでいる。