平成26年度、荒川区内全34の小中学校で、1人1台情報端末の配置が完了した。荒川区立第三中学校の清水隆彦校長は「キャリア教育の推進という視点から、ICT機器活用と学校図書館活用は、常に両輪でなくてはならない」と話す。
生徒たちは、図書資料と情報端末を使って調べ、学ぶ |
清水校長は、情報端末が配備される以前から、学校図書館の情報センター化に力を入れている。「これからの社会では、大量の資料を読み込み理解し、必要な情報を調べ上げる力と、ネット上の情報を検索する力の両方が求められる。無限にあるネット上の情報の中から正しい情報を選び出すには、図書資料と並行して調べることが必要」と語る。
学校図書館を使ったある授業で、1つのテーマで調べ学習を行う際、情報端末を使うA班と図書資料を使うB班に分けた。A班は話さず、1人ひとりが集中力を高め、必要な情報を調べ上げた。一方、B班は話し合い協力しながら図書資料を探して調べた。次にA班とB班の調べ方を交代させると、それぞれ同様の現象が起きた。「両方のプロセスを生徒たちに体感させたい」(清水校長)。
同校は「基礎的・汎用的能力を育むアクティブ・ラーニングの在り方(21世紀型能力の育成を目指して)」平成28・29年度荒川区教育委員会研究指定校。授業の質を高める要素として、「協働的問題解決能力視点」「外部人材活用授業視点」と共に「ICT機器活用授業視点」「学校図書館活用授業」を設定し、該当する要素を指導案にあてはめている。図書資料や情報端末をいかに効果的に使い、能動的な授業に結び付けるのか、各教科で検証する。
清水隆彦校長 |
同校では教科移動型で授業を行っている。情報端末は教科教室ごとに配備し、学校図書館には34台ある。
図書資料の検索に生徒たちが活用しているのは「本探(ほんたん)」。図書館流通センター(TRC)の図書データベースも、自校の学校図書館の蔵書も検索できる、情報端末用のアプリケーションだ。
図書資料を検索した情報端末を手に、生徒たちは書架に本を探しに行く。すると該当する本と共に同じ分類番号の図書資料が並んでいるため、選択の幅が広がる。情報端末が、生徒と図書資料を繋ぐ役割も果たしている。
流王法子学校司書は、「正しく確実な情報を得るためにどうすればよいのか。情報端末か、図書資料か。情報を選択し読み解く力を、授業で教員が指導していく必要がある」と話す。最新の情報を得たり、植物の写真を拡大して観察したりするには、情報端末が有効だ。図書資料の場合は「出典が明確」という利点がある。”図鑑は発行年がより新しいものが望ましい””どういう主張を持つ人物が書いたものか”を知り、理解することは、調べる上で重要な要素である。「図書資料もネットも、調べ方や判断の方法を知れば、一生調べることができる」と流王学校司書。同校の学校図書館はその力をつける核となっている。(荒川区・了)