授業で学校図書館を活用しようとする時、授業をデザインし指導するのは、必ずしも司書教諭や図書館担当教員の役割ではなく、小学校の場合なら担任または各専科の教員も担う。小平市立小平第一小学校では、司書教諭から他の教員へ積極的な情報発信を行っており、今年の夏休み期間に実施した校内研修会には、ほぼ全教員が参加。各学級の授業に活かされている。
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| 佐野教諭の「アニマシオン」の授業は読み聞かせからスタートした |
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| 夏の研修会では教員が「パスファインダー」を使って調べ学習。付箋を使ってお互いに評価した |
佐野弘志教諭はこの日学校図書館で、担任する２年３組３０人の児童を対象に、アニマシオンの授業を行った。アニマシオンは、１冊の本を全員で読み、ゲームの手法で本の世界を楽しむ活動。様々な方法があり、読解力や表現力、コミュニケーション力を伸ばす。
教員になって２年目の佐野教諭にとっても、児童にとっても、初めてのアニマシオン。この日は絵本「アンナの赤いオーバー」（評論社）を題材に、「前かな？後かな？」の実践を行った。絵本を読んだ後、バラバラになった各場面の絵を順番通りに並べ、場面ごとの内容を思い出し、班ごとに発表する、というものだ。
まず佐野教諭は授業の流れを説明し、「物語の順番に気を付けながら、お話を聞く」「初めての活動なので、上手くできなくても大丈夫」と伝えた。読み聞かせの後、児童は班に分かれ、物語の場面の絵が７枚入った封筒が班ごとに配られた。児童は物語の内容を話し合いながら、絵を順番通りに並べ、誰がどの場面の絵を説明するか、決めていく。発表では、児童一人ひとりが、自分の受け持つ絵の場面を紹介していった。
同校の石橋幸子司書教諭も、時折授業に顔を出す。児童の発表の様子を見て、「次の班からは、『アンナは』とか、『お母さんは』と（主語を）入れてみてくれる？」とアドバイス。それまで「毛糸を赤くしたところです」といった場面だけだった児童の説明が変化し、「アンナが～したところです」と紹介するようになった。
授業の後、児童からは「またやりたい」といった声があがった。佐野教諭は「物語の順序や文の組み立てを学ぶ機会になった」と実感しつつも、「活動の手順はもっと丁寧に教えるべきかもしれない」と、次回に向けて早速検討していた。
これまで同校で学校図書館と図書資料の活用を様々な方法で行ってきたのが石橋教諭だ。教職員全員が夏休み期間中に本を読み、推薦文を書き「先生のおすすめ本」として図書館の前に並べて紹介する、といった、全教員が関わる実践も多い。
同校では石﨑純一校長のリーダーシップのもと、学校経営の重点施策として読書量に数値目標を設けたり、必読図書を推進したりするなど、学校図書館の活用に力を入れており、教員の関心も高いという。普段から読み聞かせなども活発だ。
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| 石橋司書教諭(左)と佐野教諭 |
今年の夏休み期間中には、教員を対象とした研修会を実施した。必ず参加を求めるものではなかったにもかかわらず、ほぼ全教員が参加した。主な内容は▽パスファインダーを活用した調べ学習▽ブックトーク▽アニマシオン（ダウト） ▽ビブリオバトル▽お話バザール▽味見読書等の実践方法だ。
「パスファインダー」は、「調べ学習で本をもっと活用して欲しい」と、石橋教諭が学校図書館協力員（学校司書）と協力して作成したもので、図書資料や情報ファイル、雑誌、ＨＰのＵＲＬなどをテーマごとにＡ４サイズ１枚にまとめてパウチした。ＵＲＬを記載したのは、”信頼できるサイト”についても学んで欲しいからだ。研修会では、このパスファインダーを使った調べ学習を、教員が実際にチャレンジした。完成した作品を教員同士で見せ合い、評価し合った。中・高学年の担任から「ぜひ取り組みたい」との声も挙がり、好評だった。
佐野教諭は、初めて教員として赴任した同校で学校図書館の活用に触れ、その大切さを知ったという。「研修で学んだブックトークなども実践したい」と語る。研修会で共有された実践方法は、今年度内に各学級で行う予定のものも多い。学校図書館を柱とした学びが、着実に根付いている。
