第36回教育委員会対象セミナーを12月7日、東京・KFCホールで開催、12道府県から73名が参加した。次回は1月25日に福岡・天神クリスタルビルで開催する。セミナー日程は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ
総務省情報通信 利用促進課長 御厩祐司氏 |
教育においてICTを利活用する意義は「3つのA」で表現できる。「Active(活動的)」、「Adaptive(最適化)」、「Assistive(補助)」だ。
主体的・対話的で深い「Active」な学び、個々の児童生徒に応じて最適化された「Adaptive」な学び、様々な困難を改善・克服した「Assistive」な学び。これら「トリプルA」の実現に資するICT環境の整備が求められている。
現状では、自治体間格差が広がっている。格差が一層顕著なのは「無線LAN」だ。普通教室への整備率100%は226自治体、0%が555自治体と二極化が進んでおり、「平均値(26・1%)」とは乖離している。「隣町は100%、我が町は0%」という「0―100問題」も、国内各地で起きている。
整備が進まない理由は何か。
「財政が厳しいから」という声をよく聞くが、データによると必ずしも正しくない。約1800の自治体中、地方交付税が不交付である財政力指数上位76自治体の無線LAN整備率は平均35・2%。一方で財政力指数下位58市町村では平均49・3%。財政力の低い自治体の方が、むしろ整備が進んでいる。
財政力が低い自治体は、過疎地など条件の悪い地域が多い。「3つのA」のうち特に「Assistive」の効果を期待して整備を進めているのだろう。教育資源の不足をICTの活用で何とか補おうとしているのではないか。
逆に都市部の学校では整備が遅れており、教室の中だけ見れば、過疎地の学校の方が近代的なケースも多い。
総務省では、学校のICT整備を「天・地・人」で加速していく。天=「クラウド」、地=「ネットワーク」、人=「サポート体制」だ。
「日本再興戦略」では、「今後の初等中等教育の情報化を進めていく上でクラウドを全国の学校現場に普及させる必要がある」としている。学校現場にクラウドを導入するメリットは「学校予算・教員の負担軽減(Savable)」、「データの安全・安心な保存・活用(Secure)」、「児童生徒数や利用の増減などへ柔軟な対応(Scalable)」、「学校・家庭・地域など切れ目なく活用(Seamless)」の「4S(For School)」だ。
総務省では、教育クラウド・プラットフォームの標準化などを通じ、クラウド化を推進している。
クラウド活用には、通信環境の整備が欠かせない。これが地=「ネットワーク」だ。学校の多くは避難所・避難場所に指定されており、防災の観点からも、学校のネットワーク整備は急務。総務省では、防災等に資する無線LANの整備を計画的に推進していく。
人=「サポート体制」については、プログラミング教育の全国普及に向けて地域人材を指導者として育成していく。
総務省「若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業」では、全国11ブロックごとに地域人材やクラウドを活用したプログラミング教育の実証を進めている。大学生を指導者として育成・活用する際、大学の単位として認める取組もある。
今後もクラウド活用・ネットワーク整備・サポート体制構築の「天・地・人」の枠組みで、教育の情報化を支援していきたい。
【講師】総務省情報通信利用促進課長・御厩祐司氏
【第36回教育委員会対象セミナー・