2月22日、大阪市内で第10回私立公立高等学校IT活用セミナーを開催。稲垣俊介准教授・山梨大学教育学部は初めて実施された大学入学共通テスト「情報Ⅰ」の問題傾向と分析、近畿大学附属高等学校と兵庫県立御影高等学校は1人1台端末を活用した授業改善、大阪府立摂津高等学校と雲雀丘学園中学校・高等学校は「情報Ⅰ」におけるプログラミング実践と「データの活用」の評価方法について報告した。なお、所属等は2025年2月時点。
兵庫県立御影高等学校 西川昌弥教諭
御影高等学校の西川教諭はICTを活用した生徒の主体的な学びと思考力を高める実践について報告した。
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ICTに対する心理的なハードルは教員と生徒で乖離がある。教員は「すべて分かってからでないと不安」であったり、変革に抵抗がある教員もいる。生徒は分からずともやってみるとチャレンジするものの、「飽き性」という側面があった。
そこで、教員への仕掛けとして不安を払しょくするため日頃から教員間のコミュニケーションの拡充を図った。またICTを使った主体的な学びの促進には学年・教科の垣根を超えて授業デザインを共有することが効果的であった。他の教員のアプローチの方法を知ることは新たな視点を得るきっかけになり、評価方法など指導以外の切り口でも学びは多い。
教員に対して授業で色々なアプリを使ってよく、1つだけでも使うことを提案している。難しい場合は従来のチョーク&トークの授業でもよいが、生徒の活動では端末を使う時間を確保するよう伝えている。目的は生徒を主語にしたICTを使った主体的な学びの実現であり、教員の武器である授業マネジメント力を活かし、生徒の特性を理解して活用させることが重要だ。生徒が良さを実感すれば、自発的な活用が始まり思考力を高める学びにつながる。
生徒への仕掛けとしては端末を日常の文房具と意識づけるためノートアプリを活用。書く力の育成のためタッチペンの購入を推奨しており、生徒はノートアプリに板書を書き写したり小テスト前に単語の書き取りをしたり、従来の鉛筆とノートのように使っている。画面分割機能でデジタルドリルと計算用のノートアプリを同時に表示するなど独自の活用を発見する生徒も多い。苦手な生徒に得意な生徒が教えるなど端末を介して学び合いも生まれている。また教員によって異なるアプリを利用しているため、生徒を飽きさせず生徒は上手く複数のアプリを使い分けており、情報活用能力の育成にもつながった。
英語科では教員が辞書アプリのスクリーンショットをノートアプリに貼り付けて教材を作成。辞書を使うと単語の意外な意味や用法の発見につながるという気づきを生徒に与えることができた。
情報ⅠではAppleのアプリ「クラスルーム」で生徒の画面を把握し、全体で共有。個別に取り組む実習でも互いに途中経過を参照でき、対話が生まれ、内容の深まりが見られた。
体育科では各自YouTubeで器械体操の模範演技を視聴し、生徒同士で実技の様子を撮影。画面分割機能で模範演技と自身の実技を並べて比較し改善点を話し合っていた。これは教員が指示したのではなく生徒たちが自発的に取り組んでいる姿である。生徒自身による学びの促進が行われており、思考力を高める学びにつながった。
日頃の授業で端末を文房具として意識づけることで、授業外でも探究のポスター発表時に実験動画を流したり、体育祭のリレーの着順判で動画撮影を行ったり、生徒は思考しながら主体的に端末を活用している。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年4月21日号