2月10日、名古屋市内で第118回教育委員会対象セミナーを開催。益川弘如教授・青山学院大学はGIGA2期で求められる深い学びについて講演。新座市と岐阜市はゼロトラストネットワーク、春日井市はクラウドを活用した主体的な学びと教員研修、吉根中学校は端末・生成AIを活用した子供中心の学びについて報告した。
名古屋市立吉根中学校 丹羽広重校長
吉根中学校は今年度、名古屋市のナゴヤ・スクール・イノベーション事業「すすめるプロジェクト」実践校および文科省生成AIパイロット校の指定を受け、子供中心の学びに取り組んでいる。丹羽広重校長が報告した。
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子供が考えたり話し合ったり、体験したりする子供中心の学びは主体的に学ぶ態度や深く考える力につながる。そのためには教員が教え込む授業から子供が学び取る授業への転換が必要だ。
本市では昨年度、学びのコンパスを策定。目指す子供の姿として、ゆるやかな協働性の中で自律して学び続ける姿が示されている。本校でもこの姿を目指し、各教科で対話を重視した学び合い活動に取り組んでいる。
2年国語科「走れメロス」では登場人物の人物像に迫るため、個人の考えをクラウドで共有した後、グループで協働し人物像が分かる表現を探し出した。最後には生徒1人ひとりが根拠を明確にもって人物像に迫る様子が見られた。
1年社会科ではグループ対抗で「EU加盟or脱退ゲーム」に挑戦。各国に分かれて今まで学習してきたことをもとにEUに加盟するか否かを討議。用意されたカードに書かれたデモの発生や銀行の倒産などのニュースによって資産ポイントが増減するというゲーム性がある。最後にEUに加盟することのメリットとデメリットを記述し学びをふり返った。
2年数学科「図形の調べ方」では一つの問題についてグループで解き方を考察し、全体で共有。生徒は自分とは異なる考えを聞いて、自らの学びをふり返ったり深めたりしていた。
2年家庭科では端末に配信された資料・動画を見ながら自分のペースでトートバックの製作に取り組み、時には友達にアドバイスを求めるなどゆるやかな協働性の中で学び合った。
誰一人取り残さない学びのため、居場所づくりとして設置している「にじいろルーム」と教室をオンラインでつなぎ、教科の授業に参加できるようにしている。Webカメラを利用することでグループの話し合いに参加することも可能だ。
このほか、生徒手帳の内容の一部を二次元コードでデジタル化したり、合唱コンクールに向けたアンケートで生徒の意識向上を図ったりと端末の様々な活用方法を考案。生徒会・委員会活動はTeamsで情報を共有し議案書を端末で見ながら話し合いを進めている。
生成AI活用も今年度から始まった。学校DX戦略アドバイザーによる小中合同研修では、生成AIを使った英会話練習を体験したり、画像生成のコツを学んだりした。
ある教員は、理科の授業で使うアプリを作成するため生成AIでプログラムを書いてもらい、タッチペンで囲った部分の面積を測定することができる「画像の面積計測アプリ」を作成。生徒は授業で実際にこのアプリを使って葉の面積と蒸散量の関係を調べていた。
ほかにも校長式辞のたたき台原稿の作成や進路説明会資料の表紙絵の画像生成など、校務活用が進んでいる。
情報モラル教育の一環として生徒全員が生成AIの技術やリスクを学ぶことができる動画教材を視聴。英語科の英会話練習など授業にも生成AIを取り入れ始めている。
数学科では、入試問題を作成する数学科の高校教員役としてAIに役割を与え、問題を生成し生徒同士で解き合った。自分のレベルに合った問題を作成してもらうことで生徒の意欲が向上。問題のヒントを尋ねたりしながら主体的に取り組んでいた。今後は生徒自身の生成AI活用をさらに進めていく。
教育家庭新聞マルチメディア号 2025年3月3日号掲載