2月10日、名古屋市内で第118回教育委員会対象セミナーを開催。益川弘如教授・青山学院大学はGIGA2期で求められる深い学びについて講演。新座市と岐阜市はゼロトラストネットワーク、春日井市はクラウドを活用した主体的な学びと教員研修、吉根中学校は端末・生成AIを活用した子供中心の学びについて報告した。
岐阜市教育委員会 GIGAスクール推進室 久保田浩司係長
岐阜市はゼロトラスト型ネットワークを2025年9月から運用する。本更新の検討の経緯を久保田浩司係長が報告した。
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現環境はオンプレミスで通信はセンター集約型。次期環境ではクラウド認証基盤を構築してシステム・データを移行し、通信はローカルブレイクアウトで整備する。ゼロトラストの強みはセキュリティ事故が発生しても早期にインシデントを検知し対応できる点にあると考えている。
ゼロトラスト型ネットワークの構築とあわせ、校務端末の在り方についてもあるべき姿を検討。現端末はレスポンスの遅延、学習者用端末(iPad)とのデータ連携、バッテリー性能、教員のチャレンジを促すクリエイティブな作業などに課題があった。
そこでOSごとの使い勝手を比較。端末の操作性は個人の「慣れ」による部分が大きく、システムやソフト・アプリの利用、レスポンスにOSによる差はないと考えた。さらにロケーションフリー化による持ち運びを想定してSurface ProとMacBook Airの校務使用の実証を実施したところMacBookの評価が高かった。GIGA第2期でも学習者用端末をiPadとすることから、データ連携やクリエイティブな作業などの課題解決に期待してMacBookを新校務端末に選定した。
2025年9月より新ネットワーク環境、新校務端末に移行する。従来のWindows端末から動作環境が変わるため丁寧に習熟のステップを踏む必要があると考え、各校に先行して1台配布しICT担当教員への操作説明と校内展開を進める。全教員へのオンデマンド説明コンテンツの提供、切替の際には現地にて全教員を対象とした研修を予定している。
様々な教育DXの取組も推進。小中学校に導入しているスマート連絡帳は保護者がアプリに入力した出欠席情報が校務支援システム、感染症情報システムに自動連携され転記や2重チェックが不要になった。
中学校には採点支援システムを導入。採点・集計等にかかる手間の削減効果は導入1年を経てさらに増えた。2023年度は前期・後期あわせて学校平均272時間、24年度は前期のみで211時間と教員の習熟により効果が向上。システムによる分析資料を生徒・保護者との懇談や職員会議で利用しており生徒の学習改善、教員の授業改善につながったという声が届いている。
昨年度より小規模校3校をオンラインでつなぎ、多様な考えに触れる学びの充実を図っている。壁面ホワイトボードにプロジェクターを投影し3校の児童が同じ空間で学べる環境を構築。Zoomのブレイクアウトルーム機能で個の学びにも対応したが、オンラインのみだと恥ずかしがったり、相手のことがわからなくて不安だったりと一部活動が停滞することがわかった。そこで今年度は各学年で年2回、リアルな交流学習も実施。3校の教員はチャットを活用して連携を図っている。
2024年6月から、生成AI活用の実証に取り組んでいる。子供たちの学びの場面ではデジタルの善き使い手を目指すデジタル・シティズンシップ教育の更なる浸透を図りつつ、個別最適な学びや探究的な学びにつながる活用を検証。教員の業務効率化、創造性を高める活用についても検証を進めている。教員は指導方法のアイデア出し、音声メモの書き起こしなどの校務に活用しており、1回の業務で平均約28分の短縮が図られている。
教育ダッシュボードの実証も実施。利用実態から有効な活用方法を今後検討していく。
デジタル人材の確保・育成に向け、各種研修や実践の共有を通じて教員へのデジタルツールの活用の浸透を進め、ロイロ認定ティーチャー制度を活用しさらに裾野を広げているところだ。
教育家庭新聞マルチメディア号 2025年3月3日号掲載