2月10日、名古屋市内で第118回教育委員会対象セミナーを開催。益川弘如教授・青山学院大学はGIGA2期で求められる深い学びについて講演。新座市と岐阜市はゼロトラストネットワーク、春日井市はクラウドを活用した主体的な学びと教員研修、吉根中学校は端末・生成AIを活用した子供中心の学びについて報告した。
春日井市教育委員会 学校教育課 望月覚子指導主事
愛知県春日井市は自ら学び続ける児童生徒・教員の育成を目指し、アウトプット中心の複線型授業や体験型の教員研修に取り組んでいる。
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端末・クラウドによって学びの可能性が広がった。教員からの情報だけでなく子供の考えがクラウド上でわかるようになり、得られる情報量やコミュニケーションが増加。さらに1人ひとりが探究の学習過程に沿って学ぶことで活動が複線化し、アウトプットの量や質も向上。教える授業から自ら学ぶ授業へと変わってきた。
本市の小学校算数の授業の一例を挙げると、まず教員の説明や教科書の読解などの一斉指導で本時の見通しを持つ。この時、教員は見方・考え方といった学習のポイントを示す。
次に本時の自分のめあてを決め、そのめあてに沿って取り組む内容を子供が選択し、個の学びに入っていく。教員はチェック問題を用意したり、クラウドを活用したりして1人ひとりの状況を把握する。ふり返りは、どのような内容を書くのかについて明確にすることで質が向上する。
事前にGoogleクラスルーム上で、学習のゴールや学習過程に沿った学習方法をいつも同じ流れで提示し、学習の手引きにも単元や年間を通して同じ見方・考え方を示している。
実践を積み重ねる中で情報活用能力の育成が重要であり、中でも課題の設定・情報収集・整理分析・まとめ表現といった問題解決の基礎を育成することによって問題解決的な活動がより充実していくことが分かってきた。そこで研究開発学校として、体系的な情報活用能力の育成のための小中一貫のカリキュラムを編成。各学年35時間の「情報の時間」を創設し、実践している。
「情報の時間」では、例えば動画を見て学ぶために、動画を見ながらメモをする活動などが考えられる。さらに、見つけたものを写真に撮る、写真を見て改めてじっくりと観察する、自分が制作した動画を見て改善するといった情報活用能力を発揮する機会を多く設けている。
教科書から情報収集するには、どこに書いてあるか、どんな言葉を選ぶか、どこで区切るかなど読み取りの指導をする必要がある。
整理・分析においては、例えば類似点と相違点を見つけるといった「比べる」ための基本的な見方・考え方を示し、低学年から繰り返し体験する。
教科書からの情報収集を含む情報活用能力、基盤となる学習のマナー、学習過程に沿った学び方、整理分析の方法など、これらの基本的なことを丁寧に指導し繰り返し体験しながら習得させることで、自分で学べるスキルが身についていく。
本市では授業と研修と校務は相似形と考えている。教員は校務で日常的にクラウドを活用しており、便利だと感じたことを授業に活かしている。
研修は授業と同じ1人1台端末・クラウド環境で、探究の学習過程に沿って行い、研修内容を習得するだけでなく、クラウドの活用方法と学習過程に沿った学び方を体験。事前にクラスルームで研修内容や流れを把握しておき、実際の研修では教員が自らめあてを決め、授業参観や講師の話から情報を収集し、めあてに沿って整理・分析し、最後にまとめ、ディスカッションする。
授業と研修は学ぶ内容が変わるだけで、探究の学習過程はいつでも誰でも学びに使うことができる。
体験型の研修はすぐに授業に活かすことができ、クラウドを使って教員自身の学びに活かす場も設定。研修に参加した他校の教員と非同期分散で事後課題に取り組んだり、研修で得た学びを校内チャットでアウトプットすれば他の教員の学びにもなる。いつでもどこでも日常的に学ぶことができ、教員の働き方改革につなげるとともに、自ら学び続ける教員の育成を図っている。
指導主事による授業改善のための伴走支援も実施。
ある教員は低位の子を意識して説明が長くなり子供が自ら学ぶ時間が短くなってしまうことを課題に感じていた。そこで先進校の授業を参観し、自分のめあてを書くタイミングを調整したり、1人ひとりを把握して個別に声をかけたりと自らの授業を見直した。また、表現する方法や活動時間を増やし、チャットでの他者参照にも取り組んだ。これにより教員が説明する時間を短縮することができた。
こうした授業改善の取組もチャットで共有することで校内・地域の学びが広がる。
教育家庭新聞マルチメディア号 2025年3月3日号掲載