2月3日、福岡市内で第117回教育委員会対象セミナーを開催。堀田龍也教授・東京学芸大学教職大学院は次期学習指導要領に向けたGIGA第2期の最新動向について講演。石垣市は次世代の校務DX、山江村と春日西中学校は1人1台端末を活用した授業改善について報告した。
石垣市教育委員会 比嘉幸宏主任(事務)
石垣市教育委員会 学校教育課 情報教育推進係 村山信太郎係長
石垣市は次世代校務DXに向けて環境整備を進めている。GIGAスクール構想当初から学校ICT環境整備に携わってきた比嘉主任は「システムをつなげると業務が大きく変わる」と話す。
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小学1年から3年はiPad、小学4年から中学3年はWindows端末、汎用ツールはGoogle for Educationを利用している。石垣市のICT活用基本方針「I-プラン」を策定し、ICT支援員を6人配置してICT活用を推進。
文科省の示す教育DXに係るKPIの2024年度目標値「端末の週3回以上の活用」「指導者用端末整備」「インターネット接続を行う普通教室」「ICT研修を受講する教員」はすべて100%を達成しており、2025年度の「校務で生成AIを活用」「クラウド対応の教育情報セキュリティポリシーの策定」も達成した。現在、FAXや押印の原則廃止などを進めているところだ。
GIGAスクール構想により1人1台端末とアカウント、統合型校務支援システム、学習eポータル、デジタルドリル、保護者連絡システムなど学校には様々なシステムが導入された。しかしそれらのシステム管理のためにかえって業務が煩雑になったという声もある。
多くの場合、「ある業務を改善したいからこのシステムを導入する」ということに目が向きがちだが、単一の業務に対し単一のシステムが稼働し、その結果システムが乱立する状況になると複数のアカウント管理が発生し、すべてのシステムの更新作業が必要になってしまう。
デジタルをただ使うだけでは業務は効率化しない。それらをどうつなげるかというシステム連携の視点が重要である。システムをつなげると、業務が大きく変わる。
例えば通知表や指導要録を作成する際、成績処理システムで成績を確認し、出席管理システムで出欠日数を確認し、と様々なシステムを行き来しながら入力していたものが、システムを連携すれば入力・確認・設定は一度のみで済み、重複作業や非効率な業務を削減することができる。
その理想形が文部科学省の示す次世代校務DXだ。
校務支援システムと学習eポータルにデータを集約し、1つのデータ基盤に統合することで、システムの往還が不要になり、更新内容がすべてのシステムに反映される。必要な情報をどこからでもシームレスに活用できる環境だ。本市ではこれを目指して環境整備を進めている。
まず学校のICT環境を徹底的に見直し、システムの土台作りから着手。システムの効果のみを求めるのではなく、全体的なシステム図を整理し、クラウド化、統合型校務支援システム、統合ID管理の3つを軸にシステムを再構築した。
統合ID管理はMicrosoft Entra IDを利用。教育機関であれば無償で使うことができる。1つのアカウントに様々な情報・システムを紐づけて管理でき、校務と授業で使うツールが異なっても1つのアカウントでログインできる。
さらに統合型校務支援システムにすべての情報を集約・反映するようにしている。AIドリルも名簿連携でシームレスにつながり、欠席連絡も保護者連絡システムから校務支援システムに同期して教員がチェックするだけで出席簿に反映される。次年度の新入生名簿や健康診断結果も教育委員会が入力。教員の作業は不要だ。これにより教員の負担を大幅に削減することができた。
システム管理を効率化することで本来の業務に集中できる環境になる。さらにデータを集約してデータを使いやすい環境とすることで、今後のエビデンスに基づく教育やデータドリブンの下準備にもなると考えている。小さな連携からでも始めると現場の負担軽減につながるだろう。
教育家庭新聞マルチメディア号 2025年3月3日号掲載