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教育ICT

学習集団の心地よさが学力に影響を与える アセスメントでよさを見つけ、さらに伸ばす~かほく市教育委員会・かほく市立七塚小学校

2025年3月5日

2022年度に改訂された生徒指導提要には、いじめや不登校などの未然防止や早期発見・早期対応のためにアセスメントを充実すること、アセスメントにおいて発達面や学習面、進路面、健康面、心理面、社会面(交友面)、家庭面などを多面的に見ることが重要であると示されている。石川県かほく市では総合質問紙調査「i-check(アイ・チェック)」(東京書籍)を全小中学校に導入し、独自の学力調査とクロス集計を行っている。学習集団の状態がひと目でわかり、好事例の共有や手立ての具体化に役立てている。かほく市教育委員会とかほく市立七塚小学校に導入の効果と活用の様子を聞いた。

 

学習集団の強みと弱みを可視化

竹森恵美指導主事・かほく市教育委員会

本市では令和の日本型学校教育を踏まえた市の学力向上の重点「『個別最適な学び』と『協働的な学び』を一体的に充実させた『主体的・対話的で深い学び』の具現化」に向け、2024年度は「学習集団づくり」「指導の個別化」に重点的に取り組んでいます。「チームかほく」としてそれぞれの学校の良さを活かしながら無理なく授業改善や学校運営に寄与できるような支援を行っていきたいと考えています。

その取組の1つが、アセスメント(客観的な調査・分析)の実施です。各校ではそれぞれ独自にアセスメントを行っていますが、それに加えて市教委として、総合質問紙調査「ichecki(アイ・チェック)」(東京書籍)を全小中学校に導入しています。

アイ・チェックでは、学校や学年、学級や各児童の様子をレーダーチャートや散布図で確認でき、「話し合いで積極的に情報発信をしている」「自己肯定感が高い」「生活習慣が身についている」など各項目の達成状況が可視化されます。それぞれの数値が高いほど、レーダーチャートは大きくなり、各項目が満たされているほど、レーダーチャート(円)の形も滑らかに表現されますので、集団の状態がひと目でわかります。

同一集団の経年比較も見ることができる上、どの項目が特に大きく伸びているのかもわかります。この結果を基に各校では、「自己肯定感を高める」取組に力を入れたり、「情報発信の機会を増やす」授業や活動、声かけを心掛けたりなどに取り組んでいます。

個別チャートにより、複数箇所で数値が低い子供の情報を共有しやすくなり、支援の手立ての具体化に役立っています。これまでも行っていた取組もありますが、アセスメントにより明確な目的をもって取り組みやすくなったと感じています。

レーダーチャートでは学級状態や経年変化がひと目でわかる

学力テストとクロス集計で分析

本市では独自の学力調査を行っており、アイ・チェックとクロス集計をしています。クロス集計により、レーダーチャート(円)が大きい学校や学年ほど、学力も総じて高い傾向にあり、子供にとって心地よい集団であることが学力に影響を与えていることがわかります。なお本市の学力調査は、国や県の学力調査対象ではない学年(小学校5年、中学校12年)で行っています。

同一年度内の子供たちの回答の推移を見ていくことでより効果的な支援につながると考え、2024年度から、アイ・チェックを年2回実施することとしました。1回目の調査では、よいところ、伸ばすべきところを明らかにし、2回目の調査でその推移チャートにより成果を確認するとともに次年度の教育課程の改善に活かすという流れで利用したいと考えています。

アイ・チェックを利用しながら授業改善を進め、4年目になりますが、この4年間でどの学校のレーダーチャート(円)も大きくなっていることに成果を感じています。

調査結果は校長会などで共有

学習集団づくり研修会で、アイ・チェックの分析結果を共有している

これらの分析結果は校長会で共有もしています。レーダーチャート(円)の大きさでそれぞれの集団の状態がひと目でわかり、授業改善を行うことで子供の意識が変わることを可視化できる点がアイ・チェックのよい点です。前回よりも円が明らかに大きくなった学校ではどのような取組を行っているのかなど、情報共有が具体的になりました。

学習集団づくり研修会も希望者対象で行っています。研修では、大きな変化があった学校や相関関係が明らかな学校を好事例として共有しています。

例えば、レーダーチャート(円)が1年で明らかに大きくなったある学校では、教員が年2回、授業を公開して改善の変化を検証しており、「学級の絆」「規範意識」が特に伸びていました。また、ある複式学級で、日常的に個別最適な学習を行っていたクラスで特に大きく伸びていたのが「他者からの支え」でした。

アセスメントでは低い部分に目がいきがちですが、よいところを見つけ、そこがなぜ伸びているのかを検証すること、さらに伸ばすことも大切です。

202412月には「アイ・チェックハンドブック」を活用し、2回目の調査の分析のための研修会の実施を各学校に委ねました。今後は、学校のみで調査結果の分析・指導改善を進めることができる仕組みとするため研修会を継続し、自走につなげていければと考えています。

 

アセスメントによる可視化で温かな絆と心の居場所づくり

稲垣優子校長・かほく市立七塚小学校

2024年度は「主体的に考え、表現する児童の育成」を目標とし、温かな絆と心の居場所づくりに取り組んでいます。「自他の違いを認め合い、お互いを尊重し合う子の育成」は重点目標の1つです。この目標達成に向けて、アイ・チェックや本校の独自調査であるハートチェック、いじめ調査など複数のアセスメントを行っています。

ハートチェックは、学校生活が楽しいか、温かい言葉をかけてくれる友達がいるかなどを学期ごとに調査します。アイ・チェックは今年度から年2回実施していますが、子供が本音を書きやすい質問内容になっていると感じています。複数の調査データがあることで、手立ても考えやすくなります。

アイ・チェックならではの分析結果が、「リスクマネジメント表」です。

これは対人ストレスや自己肯定感、いじめのサイン、生活習慣、先生の支えや友人の支えの有無など、困り感のある子供それぞれの課題をリスト化して細かく見ることができるものです。気になる子について、なぜそのように感じるのかが明らかになりますし、あまり教員のそばに来ない子であっても、どのようなことを考えているのかなどの気付きを得ることもあります。アセスメントにより初めて見えることもあります。

本校の分析結果については、全体として予想以上によく、うれしく思うとともに、課題があるものの学校や友達の支えで助けられている子供や、問題がなさそうに見えるが要支援のカテゴリにいる子供もいるなどの発見もあります。

これらの結果を基に本校の生徒指導主事や担任とも相談しながら手立てを考え、子供もしくは保護者と面談を行ったり、福祉機関と連携を図ったりしています。

いじめの件数が増えているという調査結果や報道がありますが、いじめの早期発見に取り組み解決していこうという意識が高まっていることの現れでもあると感じています。認知件数が増えている一方で、解消件数も増えているのではないでしょうか。

 

学校中で「きらきらさん見つけ」 ほめ合うことで心が穏やかに

宮前奈美教諭・生徒指導事部 特別支援教育コーディネーター

学期ごとに生徒指導の重点項目を設定して自己肯定感の向上や安心できる学習集団づくりに向けた取組を行っています。

お互いにほめ合い、よいところを見つけ合う機会を増やす取組として、「ほめほめタイム」や「きらきらさん見つけ」があります。

「ほめほめタイム」は帰りの会で、グループごとに、その日の友達の素敵だったことやすごいと思ったことを共有する時間です。

「きらきらさん見つけ」は、全校で行う取組です。

「きらきらカード」を作成し、友達について素敵だと思ったこと、すごいと思ったこと、何かをしてもらってうれしかったことをカードに書いて贈り合います。

最初の週はクラス内で、次の週は隣のクラス同士で、その次の週はほかの学年の友達とカードを交換します。字がきれい、サッカーの練習を頑張っている、歌が上手など、様々なほめ言葉が学校中にあふれることで、子供の表情も変わっていきます。ほめられるとうれしいのはもちろんですが、人のよいところを見つけようとする気持ちをもつことで、心が穏やかになるのだと感じています。

このほか週1回、「児童理解の時間」を設定しています。

課題や困難を抱えている子供について情報共有を行い、どのような手立てを行えばよいのか、手立てを行って成果があった内容などを共有・個人ファイル・週案に記録しています。

手立ての1つひとつは、子供に声かけをする、授業改善を心がけるなど、教員としては日常的な取組ですが、アセスメントによる可視化により生徒指導として子供を支えることにつながっている、という意識をもつことが成果につながると考えています。

 

教育家庭新聞マルチメディア号 2025年3月3日号掲載

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最新号見本2025年02月27日更新
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