文部科学省初等中等教育局学校情報基盤・教材課およびデジタル庁国民向けサービスグループ準公共(教育)班は2月17日、「学校ネットワーク自治体ピッチ」をオンライン配信形式で開催。14の通信事業者等による学校向けインターネット回線サービスの商品説明が行われた。当日登壇した14社及びその他の事業者のオンデマンド動画を「教育DXサービスマップ」のWebサイトに公開中。
14事業者の提案詳細:14事業者が安価なギャランティ型など新規提案――学校ネットワーク自治体ピッチ
1人1台端末が全国の小中高等学校で整備され、ICTがもたらす学びの質向上に資する取組が全国に広がっている。今後はデジタル教科書やオンライン教材、あるいはCBT(コンピューターを使った学力テスト)による調査がさらに普及することが見込まれる中、ネットワーク環境で十分な帯域を確保しているのは学校全体の2割程度に過ぎない点が大きな課題として指摘されている。
こうした現状を受けて2024年8月、文科相・総務相・デジタル相が連名で通信事業者に対して学校向けネットワークの提案の充実と配慮について協力を要請した。
この日のピッチはそうした流れの一環で開催されたもの。自治体側には当面の推奨帯域を満たすために、まずは学校規模に合った回線を導入することを要請し、各種予算・施策においても強力に後押しをしているところ。
デジタル庁国民向けサービスグループ参事官補佐の川﨑拓磨氏は、「こうしたイベントを通じて自治体と事業者がつながり、一層のサービスの改良や価格面での競争が生まれていくことがねらい。子供たちの学びの充実のためにも、自治体の方々にはぜひサービスマップやピッチを活用し、ネットワーク環境を改善・高度化させてほしい」と述べた。
新井亮裕係長(文部科学省初等中等教育局学校情報基盤・教材課デジタル教材基盤係)
文部科学省初等中等教育局学校情報基盤・教材課デジタル教材基盤係の新井亮裕係長は次の2つについて説明。
2月17日にデジタル庁の教育DXサービスマップに新たに追加した通信分野カテゴリーについて、回線種別から絞り込み検索できる手順を示した。
提供エリア・価格・推奨学校規模・ISPの有無などを比較ボタンで複数候補を並べて検討できる。回線の種別については次のように説明。
通信回線を複数のユーザで共用。例えば1Gbpsの契約の場合、それは全体のユーザでの合計の最大帯域(理論値)であり実測値は混雑具合で変動する。専用回線ではないため比較的安価。
突発的な状況を除き、1Gbpsの契約の場合はその帯域を専有でき、実測値と契約帯域がほぼイコールとなる。専用回線なので価格がやや高い。
ベストエフォート型とギャランティ型の特徴を併せ持つ回線。「ここまでの帯域は保証する」一方で、帯域に余裕がある場合はそれよりも多くの帯域を利用できる方式。(bps:Bit per Second=1秒あたりに通信可能なデータ量の単位)
本ガイドブックについては、第1章でネットワークの基礎知識(校内LAN・回線・ISPなどの仕組み)を解説。第2章で課題把握から対応策に至るプロセス、速度測定方法やユーザ体感調査の具体例を示した。
トラフィックが大きくなる原因や同時接続数の増加に対応するには、セッション数やルーター性能・Wi-Fi干渉など、様々な視点が必要。通信速度が低下する原因として「校内アクセスポイントの周波数帯や設置場所」「回線契約のセッション上限不足」「ルーター処理性能不足」など多岐に渡るため、原因特定のためのアセスメントが重要と述べた。
なお文科省が定める「当面の推奨帯域」はあくまでも校内LAN入り口での実効速度であり、ベストエフォート型回線の理論値ではなく実測で満たす必要がある点に注意してほしいと強調。国庫補助や地方財政措置を活用し、自治体担当者は専門知識を身につけながら早期に改善してほしいと呼びかけた。
教育家庭新聞マルチメディア号 2025年3月3日号掲載