11月23日、鹿児島市内で第115回教育委員会対象セミナーを開催した。鹿児島市・大分市・西米良村・福岡市・熊本市の5つの教育委員会が登壇し、学習者主体の授業・教員研修、教育データ活用、GIGA第2期の環境整備などについて報告した。
福岡市は教育ダッシュボードと分析システムによる教育データ活用の取組を推進。モデル校で試行検証したプロトタイプを基に来年度以降構築を進め、2027年度頃に全校展開する想定だ。
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教育データの活用はこれまでも学校現場で行われてきた。例えば高校入試の進路指導で過去の合格者データをもとに、生徒が希望する学校の合否の可能性を考えながらアドバイスを行ってきた。
教育データ連携基盤を構築することで、さらにデータの活用を進め、子供の学力や心の状態の変化を発見し、状況に合わせたきめ細かな指導や支援ができるようになる。早期に兆候を捉え、早い段階から適切な指導や支援をすることが重要だ。教員の経験や感覚とデータを掛け合わせることで、経験豊かな教員には指導効果の裏付けに、経験の少ない教員には指導や支援の指針となる。
スタディ・ログは全国学力・学習状況調査や福岡市独自調査等の学習に関する調査、ドリルの進度や正答率、授業理解度、定期テストなどを収集。ライフ・ログは出欠席・遅刻の日数、毎朝の心の健康観察、保健室来室記録、生活に関する調査、学級の雰囲気などの学校生活満足度調査など。アシスト・ログは生徒指導や進路指導の記録、子供の支援の記録などを想定しているが、数字で表しにくく収集が難しいものが多い。
これらのデータをクラウドのデータレイク(貯蔵庫)に蓄積。ここから必要なデータを抽出して一元化したダッシュボードや分析システム機能をもつ教育データ連携基盤を構築する。教員が使いやすいよう、モデル校で試行検証を行い、現場の声を反映してきた。
ダッシュボードはデータを可視化し、必要な情報をまとめて見ることができるため、指導やアドバイスの精度を高め、情報を共有して組織内で共通認識を持つことができるようになる。学校全体で情報を共有し、学級担任が問題を抱え込まないようにしていきたい。
学校全体のデータを確認できる学校画面には、欠席が多いクラスや欠席・遅刻・早退が目立つ児童生徒、累計の欠席数が多い児童生徒、毎日の心の健康観察の結果とコメント、保健室来室記録などを表示。クラス画面、児童生徒個人の画面と細かく確認できる。
しかし、多忙な教員がすべてを確認することは難しく、教員からも「一目で分かるようにしてほしい」という要望があった。そこで、アラート機能を追加し、心の健康観察でイライラ・もやもやが続いている子供などがアラート表示できるようにしていく。
分析システムは複数のデータをかけあわせて変化の要因や傾向を分析するものだ。学力や心の状態の変化など、データレイクに格納されているデータを活用して、関連性などを調査している。
データの相関を調査したところ、例えば読書習慣と単元テストの結果には弱い相関があることが分かった。
これを分析システムでさらに詳しく調べると、最も読書時間の長い層は単元テストの得点が高い傾向がある。ほとんど読書をしていない層においても高得点の子供はおり一概に読書と学力に相関があるとは言えないが、読書習慣のある子供は学力が高い傾向があることが分かった。
生成AIによる分析も行った。教育データ分析の専門家として、傾向・相関関係・考察とその根拠、さらに教育施策も示すよう指示。このように見落としや新たな気づきを発見するために生成AIを活用していきたいと考えている。
教育家庭新聞マルチメディア号 2025年2月3日号掲載