11月23日、鹿児島市内で第115回教育委員会対象セミナーを開催した。鹿児島市・大分市・西米良村・福岡市・熊本市の5つの教育委員会が登壇し、学習者主体の授業・教員研修、教育データ活用、GIGA第2期の環境整備などについて報告した。
宮崎県西米良村は1人2台の端末を活用し、学校と家庭の学びをつなぐ「コネクト学習」に取り組んでおり、今年度からこれを基に複線型の授業にも挑戦。個に応じた学びを展開している。
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2016年度に1人1台端末、21年度に1人2台の端末を整備した。子供も教員も日常的な活用が定着している。教室内にはプリンターを配備。子供が自由に印刷できる環境だ。学習eポータルを活用して様々な教材やアプリにSSOでアクセスできる仕組みも構築した。便利で使いやすいと実感すると活用が進む。
17年度より毎年「教育の情報化」をテーマに研究公開を行っている。実践報告集を作成し積極的に発信。研究は小中学校合同の教育研究会で連携して進め、ICT支援員、県教委、有識者にも参加してもらっている。
学校1台、家庭1台の1人2台端末環境を活用した「コネクト学習」は2022年度にスタート。予習型、復習型、活用型の3つの型がある。単なる端末の持ち帰りではなく、学校と家庭の学びに連続性をもたせ、コネクト学習で生み出された時間を効果的に使って確実な学びの定着につなげることがねらいだ。
予習型では事前に家庭学習で学習課題について自分の考えをもたせることで導入の時間を短縮し、個々の考えを基に対話的な活動を充実させてさらに考えを深める協働的な学びや、練習問題に取り組むなどの習熟・発展の時間を確保する。
復習型では家庭で自分の力に合わせて確かめる学習を充実。Teamsの音読機能を使って英語の発音を確認したり、AIドリルで問題を解いたり、ICTを活用することで自分のペースで取り組むことができる。
活用型では単元全体を通して生まれた疑問や興味・関心に応じて各自テーマを設定し、家庭で情報収集や整理分析、まとめを行い、単元末に全体で共有。学んだことと日常生活とのつながりに気付き、学びを自分事として捉える取組だ。
今年度から複線型の学びも始まった。小学校3年の研究授業では、家庭で学習動画を視聴し、1人ひとりめあてを立て、学習形態やまとめ方、内容も子供が自分で選択・決定。副読本・動画・ネット検索など多様な選択肢を用意しており、Google Meetでインタビューを行う子供もいた。最後に取り組んだ内容や学習方法のふり返りをして次の学びにつなげ、学習ログを蓄積して子供が自分の成長を実感できるようにしている。
校務DXも計画的に進めている。2021年度にGoogle for Educationを構築し、22年度にMicrosoft365と連携。県内共有の校務支援システムの稼働も始まった。今年度は教員用端末の更新に合わせ校務系と学習系の2台端末をゼロトラスト化により端末1台で機能できるようにした。26年度には学習ログの活用に向けた研究に取り組む計画を立てている。
授業ではGoogle for Education、校務ではMicrosoft365を活用。職員会議や小中合同の研究会は基本的にペーパーレスだ。クラウドで意見やデータを共有・編集しながら効率的に協議を進めている。小中合同の共有ドライブでワークシートや参考になる動画を共有し連携を高めている。
今年度は遅刻・欠席連絡フォームの運用を開始した。教員・保護者双方から負担が軽減したと好評だ。11月に行った研究公開ではQRコードで出席確認を行える仕組みをGAS(Google Apps Script)で構築。来年度も校務DX・ゼロトラストによる教職員の業務改善の加速化を図っていく。
教育家庭新聞マルチメディア号 2025年2月3日号掲載