12月3日、東京都内で第116回教育委員会対象セミナーを開催。文科省の寺島史朗学校情報基盤・教材課長は第2期に向けた学校ネットワーク改善について講演。探究学習、ネットワーク統合、電子黒板や生成AIの授業活用の取組が報告された。
埼玉県坂戸市は2023年度にネットワーク統合およびフルクラウド化を実現し今年度より運用を開始。菅裕太主任は「学校のICT環境は教員の働き方に直結する。教育委員会が担う役割・責任は大きい」と話す。
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2023年度の校務系ネットワーク環境の契約更新は校務の在り方そのものを見直す機会と捉え、既存ベースではなくゼロベースで考えるという共通認識の下で検討。クラウドベースのシステムと最新の機器を前提に、保護者連絡システムなど校務に関するものはまとめて調達し、可能な限りすべてデータ連携させることとした。また避難所としての利用を想定した公衆無線LANの利用など災害対策の視点も仕様書に盛り込んだ。
2023年度に校長・教頭・教務主任・養護教諭・事務職員も参加する選考委員会を立ち上げ、現場の意見を反映しながら公募型プロポーザル方式で事業者を選定した。
構築は2チームで進行。インフラチームは端末の設定、ネットワークの構築、ファイルサーバのデータ移行を実施。データ整理など事業者や学校と密に調整しながら進めた。校務支援システムチームは教頭・養護教諭・事務職員に現場の実情をヒアリングしながら検討し機能を決定。
印刷環境も見直した。別々に導入していたプリンター・コピー機・スキャナー・FAXを複合機にまとめ、カラー・モノクロ問わず既定の枚数まで利用可能な環境を整備。インク等の消耗品は自動で学校に配送されるため管理負担の低減につながった。
無償のクラウド型CMS「edumap」も導入。簡単に利用でき、学校のHP更新頻度が高まった。
新ネットワーク環境はMicrosoft365 A5を基盤にフルクラウド化を実現。自宅からも校務支援システムにアクセスできる。
ネットワーク構成は10Gbpsと1Gbpsまたは10Gbps2本構成のベストエフォート型で、冗長性を確保した。
校務用端末はSurface Pro 9を選定し、タッチペンも整備。従来よりも画面サイズが小さくなるため事務作業が多い職員には外部接続のモニターを配備している。
校務系はMicrosoftアカウント、学習系はGoogleアカウントを利用して入口の段階から校務系・学習系を使い分け、ツールによって情報漏えいを防ぐ仕組みとした。
今年度より運用を開始し、すでに多くのメリットが生まれている。データ連携を進めたことで二重入力・二重管理の手間がなくなった。朝の健康観察は校務用端末を教室に持っていくことでシステムに直接登録できる。デジタル採点システムは採点時間が3日から1日に削減されるなど予想以上の反響があった。
導入をふり返って重要だと感じるポイントは、実現したいICT環境を明確にすること、学校・教育委員会全体を把握して網羅的に対応すること、今ある業務をいかに効率的・効果的にできるかという視点で取り組むことだ。本導入では教育委員会にも学校と同様のネットワーク環境や複合機を整備し、学校からの問い合わせに即時に対応できる環境整備を行った。
教職員の理解を得ることも重要だ。積極的に学校に訪問し顔の見える関係づくりを意識した。職種によって求めるICT環境には違いがあることも配慮が必要だ。
現在は「まずは使ってみる」段階だ。出てきた課題を1つずつ解決し今後2~3年をかけてブラッシュアップしていく。本導入の経験を活かし、GIGA第2期の端末更新では、活用フェーズを見据えて取り組みたいと考えている。
教育家庭新聞マルチメディア号 2025年2月3日号掲載