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教育ICT

教職員に集中する情報をクラウド管理で業務削減 データ連携でさらに効率化~石垣市教育委員会がクラウド版統合型校務支援システム「C4th」導入

2025年1月3日

比嘉幸宏主任(事務)・石垣市教育委員会

石垣市教育委員会は、校務DXの実現を目指し、様々なクラウドシステムの導入や運用ルールの改定等を進めてきた。その一環として20234月からクラウド型の統合型校務支援システム「C4th」を導入。

比嘉幸宏主任(事務)は「導入前は、児童生徒のアカウント管理やPCの設定、システム不具合の対応などで時間に追われ、行政としての業務が後回しになっていた。それを解決したいと考え既存の環境を見直し、教育委員会にとっても教職員にとっても働き方改革に貢献する仕組みを導入することができた」と話す。

比嘉氏はGIGAスクール構想の初期から学校ICT環境整備を担当しており、早い段階からクラウド化による校務DXの実現を目指していたという。

 

教職員の負担を軽減したかった

着任当時の校務処理は、電話や紙によるやり取りが中心で、教職員は膨大な業務に追われていました。この状況を打破するため文部科学省が推進する「次世代の校務DX」を進めたいと考え、クラウド型校務支援システムの導入を決断しました。導入に当たりポイントは3点ありました。

1点目はデータ連携です。GIGAスクール構想を機に学校現場には、多くのシステムが導入され、同時にその分のアカウント管理が発生しました。アカウント管理の煩雑さを解消するため、校務支援システムを核としたアカウント連携を実現し、管理負担を軽減するとともに、教育データ利活用を促進することで、教育の質向上を目指しました。

2点目は情報の拠点を教職員からシステムに移すことです。今まではあらゆる情報が教職員に集中していたため、様々な公的な調査への回答時に、各学校の担当教職員に確認する必要がありました。情報の拠点を教職員からシステムに移行することで、システムに集約された情報を基に教育委員会側での回答を実現する等の運用に転換し、教職員の負担軽減を目指しました。

3点目は継続的な運用の実現です。教育委員会は定期的に担当者が変わるため、システムの専門知識がない担当であっても簡単に運用・管理できるシステムを導入することで、継続的な安定稼働を確保したいと考えました。

このほか、紙からクラウドでの情報管理に運用を変えることによるセキュリティレベルの向上等も含め、システムの選定を実施。システム運営選定委員会による協議を経て、ポイントとして挙げた点をクリアしている統合型校務支援システム「C4th」((株)EDUCOM)を採択しました。業界シェア1位という実績や次世代校務DXへの対応、未来志向のシステムであると感じています。

 

導入後の変化

システム導入後、教育委員会も学校現場も大きく変わりました。

クラウドによるデータ連携の実現により、教育委員会は、児童生徒のアカウント管理やPC設定、システムの不具合対応などを効率的に行うことができ、時間に余裕ができました。年度末や転出入時のアカウント管理が迅速にできるので、学校現場では端末を4月の始業式から活用できるようになり、端末の活用率向上にもつながりました。

また、公簿類(指導要録、出席簿等)の電子化により、教職員の業務負担も軽減しています。

指導要録や卒業生名簿の運用も変更し、業務改善につながっています。

指導要録の完全電子化に伴い、印刷や押印を無くす運用としました。卒業生名簿の紙での提出は廃止し、C4thに卒業生番号を入力することで、提出完了とみなす運用とし、年度末や年度始めの繁忙期の負担が軽減できています。

C4thの導入・活用によって業務改善の基礎が築けたことは、導入による成果です。データの一元管理により、国や県から調査が届くたびに学校が情報をまとめて教育委員会に提出するような業務は教育委員会で担い、学校の事務負担の低減につなげたいと考えています。

 

クラウド環境で管理コストが軽減

本市の校務支援システムはプライベートクラウド上で稼働しています。クラウド上で校務情報を一元管理することで、児童生徒情報をはじめとした様々な情報を紙で管理していたことによる煩雑な管理や紛失リスクがなくなります。

様々なシステムを、クラウド基盤を前提として導入・管理できるようになり、機器管理も効率化しました。離島である本市の学校は災害が多いため、機器の破損がとても多く、例えば台風で電線が揺れるだけで瞬間的な停電(瞬電)が発生して機器の故障が生じていました。機器の故障時には、教職員や教育委員会による現地での対応や機器の入れ替え、各種設定が必要でした。

それが、クラウドで管理することにより、教育委員会側で即時に不具合を把握し、対応することができます。

また、クラウド上で学校のルーターや児童生徒の端末を設定できる仕組みとすることで、初期設定などの作業を場合によっては半自動で完了することもできます。クラウドを管理している教育委員会の担当者が変わっても、すでに構築された仕組みを動かすだけで稼働でき、システムに関する専門知識がない方が担当者となっても継続的な運用が可能となりました。

 

データ連携でメリットが拡大

C4thとともにグループ会社であるClassi(株)の保護者連絡システム「tetoru」も導入しており、大きな業務改善効果を上げています。tetoruは教育委員会や学校から保護者への情報配信、保護者からの欠席連絡を行うことができます。

学校からの配布物を紙からtetoruを利用したアプリ上での配布に代えたことで、印刷・仕分けが不要になりました。これまでは、配布物の多い時期には印刷機の前に教職員が行列になっていましたが、現在は、スムーズに情報発信できています。PDFファイルで配布物を届けることで、カラーでの配布が可能となり白黒印刷に比べて伝えたい情報の解像度が高まるなど、教職員方や保護者に大変喜ばれています。

欠席連絡は今までの電話連絡からtetoruのアプリを利用した運用に変更しました。これにより、朝の欠席連絡のための電話対応業務が激減し、市内全体として累計942時間、平均すると1校あたり1日20分以上の対応時間が削減された計算になります(2024410月の累計)。朝の20分間は学校・教職員方にとって非常に大きく、保護者にとっても通勤など慌ただしい時間なので、体感的には削減された時間以上に反響が大きいと感じています。

さらに、C4thの情報を基にtetoruの児童生徒の名簿情報が更新されるため、学校側の管理はほぼ不要になります。保護者からtetoruで届く欠席連絡はC4thで作成する出席簿に自動連携されるため、教職員は、情報を転記することなく出席簿の作成までスムーズに実施できます。少ない管理コストで大きな効果を生むことができたのは、学校と保護者のやり取りのDX化の成果といえます。

本市は「スクールライフノート」(※)も導入しており、来年度からの本格的な運用を目指して準備を進めています。スクールライフノートもC4thと自動連携できるため、低い管理コストで大きな効果をもたらすことを期待しています。

(※子供が自分の気持ちを天気にたとえて登録するなど、児童生徒の心と学びの記録・ふり返りを支援する児童生徒用システム。学習eポータル機能も内包している)

 

今後に向けて

C4thにはダッシュボード機能があります。この機能では、欠席が続いた児童生徒に対してアラートが出るため、管理職がシステム上で、クラスや児童生徒の状況を把握することが容易になりました。今後はさらに、スクールライフノートの心の天気やAIドリルの結果も連携することで、よりよい指導・支援につながるように活用したいと考えています。

生成AIについても今後は活用を進めていきたいと考えています。教職員にはそれぞれ得手・不得手があります。苦手とする分野に取り組む際の相談先として、また、確認等のサポートが行えるツールの1つとして活用できるのではないかと考えているところです。今年度の文部科学省の「生成AIの校務での活用に関する実証研究」の実証地域として指定されているため、実証での経験を活かしながら学校・教職員にあった活用を進めたいと考えています。

教育家庭新聞 2025年1月1日号掲載

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