11月1日、第114回教育委員会対象セミナーを大阪で開催。枚方市教育委員会は端末更新と生成AIの校務活用、摂津市教育委員会は大阪府の共同調達、佐用町教育委員会は校務・学習系ネットワーク統合、たつの市立龍野東中学校は授業DXと教育データ活用について報告した。
龍野東中学校は今年度リーディングDXスクールと兵庫県教育委員会の教育データ活用研究校に指定され、ICTを活用した授業改革と教育データ活用による不登校の“超’早期発見・支援に取り組んでICT
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不登校の早期発見は月1~3回の欠席が見られる休み始めにあたる。しかしこの段階の不登校リスクの判定は難しく、支援が間に合わない場合もある。そこで本校は教育データを活用し、欠席が出始めるより前の段階で‘超’早期に発見する取組を行っている。
学期に2回、ASSESSを実施。生活満足感など6項目のうち、いずれも満足していない生徒は不登校リスクが高く、1つでも満足度が高いと不登校になりにくい傾向がある。
さらにスクールカウンセラーが作成したストレスチェックで、高ストレス値の生徒を抽出。反転項目にも注目している。
いずれもGoogleフォームで行い、データをスプレッドシートに貼り付けるだけで分析できる。これらの結果や欠席数、毎日の心の健康観察などのデータを基にスクリーニング会議で共有。経験の少ない教員もデータに基づいて把握、支援ができる。支援の方法は卒業まで継続できるようシンプルかつ持続可能な声かけ支援としている。
本校の現在の授業は生徒が課題を決めて個別・協働・一斉を自ら選ぶ複線型に変化し、教員の役割もティーチングからコーチングへと変わっている。
授業ではまず生徒が自ら学びを進め個人の思考を深める。冒頭からグループ活動を行うと個人思考が深まらないことがあるためだ。次に他者と協働することで学びを拡げたり深めたりする。授業計画や資料を事前に共有することで導入や説明の時間が短縮され、今まで時間がかかっていた探究のサイクルも授業に組み込めるようになった。
スプレッドシートで進捗を可視化することで、異なる考えの相手と学びを深めるなど目的を持った協働も進んでいる。支援が必要かを意思表示する「支援ボタン」により生徒同士の教え合いも生まれた。
Chatも活用。協働の様子が可視化され教員は通知で即時に確認でき、記録が残るのでふり返りやフィードバックにも活用できる。
生徒が自分の考えを発表する機会も増えた。学んだことや考えを説明し合うことで思考力、表現力、コミュニケーション能力が向上。自信を持って発表している。
授業改革や不登校対策は生徒のウェルビーイング向上のための取組の一部だ。子供を主語にして皆で一緒に考えると学校改善はどんどん進む。
宿題の見直しやAIドリルの導入でやらされる宿題から生徒が自ら宿題を選ぶようになった。定期考査を廃止し単元ごとのテストにしたところ、躓きが減り自己効力感が向上。
不登校支援のためのオンライン授業は学びの保障だけでなく、クラスの雰囲気が良く分かり生徒の教室復帰につながるという副次的な効果があった。
校時表や行事も見直し17時完全下校を実現。教員の働き方改革につながった。マルトリートメント対策で職員室内の雰囲気も改善するなど、生徒のウェルビーイング向上は学校や保護者、地域にも良い影響を与えると感じている。
取組の1つひとつに劇的な効果があるわけではなく、また1つだけ取り組んでも効果は得られない。少しの効果を積み重ねることによって1つひとつの取組が効果的に働くようになる。
一気に改善するのではなく少しずつ広げ、かつスパンは短く、上半期・下半期ペースで改善していくことも重要だ。
【第115回教育委員会対象セミナー・大阪:2024年11月1日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年12月2日号掲載