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教育ICT

生成AI『も』パートナー 校務生成AI実証事業をスタート <枚方市教育委員会教育研修課ICT推進係・浦谷亮佑主幹>

2024年12月2日

11月1日、第114回教育委員会対象セミナーを大阪で開催。枚方市教育委員会は端末更新と生成AIの校務活用、摂津市教育委員会は大阪府の共同調達、佐用町教育委員会は校務・学習系ネットワーク統合、たつの市立龍野東中学校は授業DXと教育データ活用について報告した。


枚方市教育委員会教育研修課ICT推進係・浦谷亮佑主幹

枚方市は昨年度、生成AIパイロット校の指定を受け生成AIの教育活用に取り組んだ。その成果も活かし今年度、モデル校10校で生成AIの校務活用に取り組んでいる。

…◇…◇…

昨年度、生成AIパイロット校に指定された枚方市立長尾中学校は教育目標を基に生徒が自ら生成AIを活用し、感じ、思考し、表現する授業研究に取り組んだ。

3年社会科の周辺地区のより良いまちづくりを考える授業では生成AIと対話して自分では思いつかない視点をもらうことができたようだ。高齢者や子育て世代など様々な立場でどのような施設が必要かを考え、さらにその根拠をインターネットで調べてファクトチェックをしながら補強。生成AIのアドバイスを基に新たな視点で考察することができていた。

2年英語科では理想の修学旅行のプランを考えて企画書を作成し発表。生成AIの作ったプランが実現可能か、移動時間などをファクトチェックして現実的なプランに落とし込むことでメリット・デメリットに気づくことができていた。

2年国語科では教科書の詩の言葉を根拠に画像生成AIで情景のイメージを生成。自分のイメージに近づくようにプロンプトを工夫していた。

生成AIの活用で生徒の考えが広がり、より具体的になった。回答が正しいとは限らないため、実際に調べてみようとグループで協働する中で対話の深まりも見られた。

活用前のアンケートでは生成AIについて半数が「言葉は知っている」、3割が「まったく知らない」、9割が「使ったことがない」と回答。「生成AIについて学ぶことは自分の将来にとって必要だと思うか」については「必要」が54%に対し「わからない」41%と活用イメージが湧いていない生徒も多かった。

活用後は6割の生徒が「自分の将来に必要」と回答。生成AIを授業で使っていない1年生と比較して約15㌽高い。多くの生徒が授業や委員会活動で使いたいと考えており、4割の生徒が週1回程度、授業中や家庭学習などで教員の指示以外で生成AIを使っている。

学習のツールの1つとして「生成AIに聞いてみる」というイメージが生徒の中に育まれたようだ。

 

生成AIを校務で活用

今年度は生成AIの校務活用による事務作業の負担軽減や業務の効率化の可能性を検証することを目的に、小中学校10校で「校務生成AI実証事業」に取り組んでいる。本事業で成果と課題を抽出し、生成AIの導入効果が期待できるならば、学校現場のニーズも参考に26年度以降の全校展開を検討する想定だ。

7月初旬に実証校への説明会を実施。夏休み中に教員が体験する期間を設け、2学期から本格活用を開始した。保護者へ実証に関する手紙も配付した。

1回程度、学校・教育委員会・企業が参加するオンライン定例会で各校の実践や課題について交流し、10月と1月に実践事例を収集。日常的な困り感はChatで相談・解決している。本事業を通して実践を50事例以上創出し実践事例集としてまとめて横展開を図り、実証校以外も含めて活用を一層促進したいと考えている。

本市が導入したのは学校向け生成AI「スタディポケット」だ。プロンプトのテンプレートが用意されており、例えば時期・学年・入れたい言葉などのキーワードを入力するだけで学級通信などが生成できる。現在、小中学校10校の教員約270人が活用している。

利用前のアンケートによると6割の教員が生成AIを使ったことがなく業務効率化や負担軽減に期待していると回答。「新たなアイデアを生み出すきっかけになるのではないか」など期待の声があった反面、様々な不安の声もあった。

事務作業や校務文書作成に1日約40分、授業準備に約50分かかっていることも見えてきた。これをどれだけ短縮できるかが1つの指標になる。

10月末に1回目の実践事例が報告された。

アンケートの考察・分析は生成AIと親和性が高い。要点をまとめたり肯定的・否定的な意見に分類したりと簡単に整理でき、作業時間が60分から5分に削減できたという。

外国語翻訳も効果的だ。翻訳したいプリントやテストを撮影して生成AIに読み込ませるだけで翻訳でき、子供を救う手立ての1つになりうる可能性が見えてきた。

他にも、行事の反省で出た意見を要約し箇条書きにして議題を絞りやすくする、学年だより等文書の誤字・脱字チェック、台風対策の洗い出しに活用した事例などが報告された。

生成AIの活用で業務の時間が削減されることにより、子供1人ひとりに費やす時間や教員自身が学ぶ時間が増加し、授業や学級など教育の質の向上、管理職による学校経営の推進につながると期待している。

本市では学びのスタイルを子供1人ひとりが決定する授業への転換を目指し授業改善に取り組んでいる。学びのスタイルの選択肢の1つとして子供たちが生成AI「も」パートナーとして学びを深めることのできるようなシステムを構築していきたいと考えている。

 

【第115回教育委員会対象セミナー・大阪:2024年11月1日 】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年12月2日号掲載

 

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