11月1日、第114回教育委員会対象セミナーを大阪で開催。枚方市教育委員会は端末更新と生成AIの校務活用、摂津市教育委員会は大阪府の共同調達、佐用町教育委員会は校務・学習系ネットワーク統合、たつの市立龍野東中学校は授業DXと教育データ活用について報告した。
枚方市は次期端末をオプトアウトで調達。2025年6月から順次更新を行う。浦谷主幹が第1期の成果と課題、端末更新の経緯を報告した。
同市は12月25日に「GIGAフェス2024」を開催。AI・メタバース体験型イベントや小中学生による課題解決型学習の成果発表が行われる。(特設ウェブサイトはこちら)
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本市はLTE端末を調達し、高度な教育を実施することから、オプトアウトを行い独自で契約手続きから端末更新まで実施することとした。
23年10月、外部有識者を交えた「ネクスト・ギガ・リプレイス意見聴取会」を設置し月1回、計9回にわたり専門的・多角的な視点で1人1台端末のあり方や必要な機能について議論を行い端末を選定。25年6月より順次、更新予定だ。
第1期と同様にiPadのWi-Fi+セルラーモデルとし、約3万5000台を調達する。キーボード一体型ケース、スタイラスペン、学習支援ソフトなどの周辺ツールも一括で調達してスケールメリットによるコスト削減を図った。
NEXT GIGAに向けて現状と課題を整理しビジョンを策定した。教員主体の一斉授業から脱却し、子供が学習過程・形態・方法・相手・場所等を自己選択・自己決定する子供主体の学習活動へ転換するための授業改善を図っていく。これによりすべての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学び、協働的な学びの実現を目指す。
その土台となるのが端末の文房具的な活用だ。教員の指示で使うのではなく、子供が使いたいときに使いやすいことを端末選定で意識した。
iPadはアプリが豊富な点が特徴の1つ。セルフサービスには110以上のアプリを格納しており子供は学びに必要なものを自分で選んでインストールしている。アウトプットの方法として音楽や動画で表現する課題も増えているが、こうしたアプリを利用して子供は直感的に使っている。
第1期の成果の1つが「枚方版ICT教育モデル」の策定だ。21年3月からの初版から毎年改訂を重ね、今年3月の改訂では生成AIの実践も収録。本市の目指す方向性を具体的に示し、教員、子供、保護者と共有している。
1人1台端末の活用で授業の在り方は大きく変わった。
GIGAが始まった21年度は学び方や表現方法が充実し学習のゴールが変化。小学2年国語科ではめあてを「動く紙芝居を作ろう」と設定。自分の表現が本文と合っているか教科書と端末を何度も行き来しながら確認したり、友達と話し合ったりしながら、新たな気付きや発見を得て修正を繰り返すことで深い学びが行われていた。
23年度になると子供の自己選択・自己決定の場面が増えた。小学4年国語科「走れ」で登場人物の変化を捉えて人物図鑑にまとめる授業では、子供たちが個別と協働を相互に行き来しながら学習を進めていた。
単元計画はあらかじめ共有され子供は見通しをもって取り組んでいる。学習方法も教科書、国語辞典、インターネットなど選択肢は子供に委ねられ、アウトプットの方法も子供が選ぶ。教員は子供同士をつなげ、課題を解決できるように支援していた。
端末活用が日常化し、学びのDXが進んでいる。
24年度全国学力・学習状況調査によると、授業での端末活用は小中学校共に「ほぼ毎日」と回答した割合が100%、調べる場面やまとめの場面、子供同士・教員とやり取りする場面でも全国平均より高い頻度で端末が活用されている。
毎日の持ち帰りにより家庭学習での活用も100%である。一方、学校と児童生徒の端末活用への意識には差が見られるため改善する必要があると考えている。
クラウドを活用した校務DXも進んだ。スプレッドシートで連絡事項を共同編集して朝の職員会議を見直したり、Chatでは授業の取組の共有や教員間の日常的なやり取りが行われたりしている。
現在はFAX、押印・署名の見直しなどの課題について関係課と連携し現状把握や課題の洗い出しをして見直せる部分から見直しを図っているところだ。
【第115回教育委員会対象セミナー・大阪:2024年11月1日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年12月2日号掲載