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教育ICT

10年前の取組を今に引き継ぐ~第50回JAET大会・パナソニック教育財団50周年合同記念パネル討議

2024年12月4日

 JAETと共に公財・パナソニック教育財団も50周年を迎えたことから、合同記念パネル討議が行われた。2014年に同教育財団が実施した「ワンダースクール応援プロジェクト」により1人1台端末を配備した実証地域4地区(富山市、春日井市、奈良市、柏市)が登壇し、当時の関係者がこれまでの取組を共有。経験を引き継ぐ若手教員は現在の実践を報告した。

コーディネータの高橋純教授(東京学芸大学)は「10年前から取り組んでいた4自治体が当時の成果や思いを活かして現在の教育DXのけん引役となっている。当時の思いを引き継ぎたいと本企画を設けた」と話した。

春日井市、奈良市、柏市、富山市が登壇

 

水谷年孝氏 春日井市教育委員会 教育DX推進専門官

ワンダースクール応援プロジェクトでは出川小学校が参加して11台端末活用を進めた

個々の考えを書き直しやすく共有しやすい、自分のペースで学ぶことができ取組を教員が把握しやすい、活動時間が増える等の成果があった。

他の人の考えを途中で見ることができる=他者参照、校務でも使える汎用ツールを使わないと授業でも上手く使えない=校務DXなど当時の実践が今の取組につながっている。

なにより、自ら学び続ける子供の育成という大きな目標の共有が今の端末の日常使いの基盤となっている。学習過程を共有して教員も子供も意識して自走できるようにすることがポイントになる。

岩川奈未教諭 春日井市立高森台中学校

担当している理科の授業では生徒が自分で学びを進めている。ポイントは3つ。

1つは生徒に自身の見通しを持たせること。GoogleClassroomで学習過程、目標、資料をすべて共有し、これを踏まえて生徒が自分でゴールを設定する。

2つ目は手本をまねさせることだ。実験動画を用意し何度でも確認できるようにしたり、Chatやスプレッドシートで互いの取組状況を白紙共有・途中参照・他者参照したりしている。教員は生徒の良い取組を例示したり価値づけしたりしてまねしやすい環境をつくっている。

3つ目はアウトプットの機会の確保だ。自分の学びをふり返りまとめることで学びが深まる。文章を書くのが苦手な子も友達の途中経過を参照しながら取り組むことで、互いの考えについて討議しブラッシュアップしている。

こうした授業の基盤となる情報活用能力を育成するために本校では「情報の時間」を設定し、自分のペースで学ぶ練習をすることで、教科の時間でスキルを教える時間を削減し、教科の学びを深めている。

「情報の時間」小・中学校で創設 再現性を高めるカリキュラムに 研究開発学校3年目の成果を報告~春日井市立出川小学校・高森台中学校

柴田純校長 奈良市立朱雀小学校

本プロジェクトには佐世保小学校が参加し、11台端末を整備した。同時に市で6校を指定してICT活用の効果検証に取り組んだ。当時はOSも検討時期で各校ばらばらであった。2年目以降は端末の持ち帰りも始まった。

本市でICT活用が大きく進んだのは、GIGAスクール構想をきっかけとした県域アカウントの整備だ。これにより情報共有しやすくなって利便性が高まった。現在はゼロトラスト環境の活用が始まっており、教員は職員室から教室に端末をもっていく。子供は常に端末を机に置いて学習している。これがどこの学校でも当たり前になった。

プロジェクト当時の経験を活かして指導主事が定期的に学校訪問して支援を行う体制で進めているが、Chatによりサポートデスクは不要になった。

西田光昭氏 柏市教育委員会教育研究専門アドバイザー

1990年にPC室を整備した当時の校長の言葉「学習は個に成立する」が今も根底にある。校内LANの整備後、2012年に全教室にプロジェクターを整備。

当時、PCは教員が学習指導のために使うものであった。それを子供自身の学びの道具にできないかと考えて本プロジェクトに参加し、協働学習に焦点を当てて進めた。

子供がつくったものをそのまま示せるようになり発表の仕方が変わった。1人ひとりが端末を活用して学習する、教員は全員の画面を見て価値づけして授業を進め、何ができ、子供の学びがどう変わるかを検証したが、今ふり返ると、これまでの授業にICTをどう入れるかという視点が大きかったようにも思う。

プログラミング教育も行った。これらの取組の中で情報活用能力が大事だという意識が生まれ、情報活用能力・情報モラルの育成を目的とした授業も実施した。

15年度、PC室での利用を前提として11アカウントを整備。これがGIGAスクール構想時に活きた。協働学習の場面をつくるにはクラウド活用が前提となる。1人ひとりの子供が自分に合う方法で学び、互いの様子をいつでも見ることができるようになったことで子供の学びが変わってきている。1人ひとりを大切にする教員の思いは今も現在も変わらない。

國香真紀子教諭 富山市立藤ノ木小学校(前・芝園小学校)

本プロジェクトは芝園小学校で取り組んだ。高橋教授がアドバイザーとなり研修を繰り返し、探究的な学びの過程が授業づくりの手掛かりとなること、端末は学習を支える道具の1つであることを伝えてきた。それが現在の学びにつながっており、汎用的な見方・考え方がこの10年で児童に根付いている。

10年前と大きく変わったことは子供1人ひとりが探究のサイクルを回すようになったことだ。学習課題、学習過程、学習形態の3つの指標を数値化して指導計画に盛り込んでいる。

指標を意識した授業づくりを行うことで、複線型の授業が始まり、授業観察の視点も整ってきた。

島崎亜希子教諭 富山市立芝園小学校

子供を主語にする学びのためには教員も伴走者として子供の発言や思考を見取り、学びが深まるよう支援するために頭をフル回転させる必要があると考えている。

小学3年理科「物と重さ」の単元では、導入で「砂糖と塩を見分けて相手に伝える」というパフォーマンス課題を設定。共通実験で技能を身につけた後、個別の探究を行うため、粉・液体・固体を21種類用意し、さらに自分たちで調べたいものを持ち寄って好きなだけ実験できる場を設定。虫眼鏡や元素記号表など子供の追究を深めるきっかけとなるような仕掛けを用意した。

 

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年12月2日号掲載

 

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