「ICTに学びを救われる子はあなたのそばにいる 東京学芸大学附属小金井小学校 ICTインクルーシブ教育セミナーVOL.7」が11月9日、日本マイクロソフト(品川区)を会場に開催された。学習者用デジタル教科書(以下、デジタル教科書)や生成AIを活用した授業を公開し、討議した。当日は174人の教育関係者が参加した。
5年国語の公開授業「想像力のスイッチを入れよう」で、鈴木秀樹教諭は、子供が利用できる生成AIを利用して「想像力のスイッチを入れる」ための練習問題を作成。生成AIが出力した架空の報道を読み、どれが事実なのか、書き手の推測かを考えた。
「本単元では、練習のために利用できる教材文と似たような文章はないかという相談が届く。これを生成AIに出力させ国語の見方・考え方を働かせる練習ができないか、と考えた」と話す。
プロンプトについては、こんなドリルを作りたいのでプロンプトを生成するように生成AIに依頼し、それを手直しした。「これから求められるドリルは、現在のドリルの中心である反復練習ではないのではないか。本授業は、次世代のドリルの在り方の提案でもある」と話した。
4年国語の公開授業「友情のかべ新聞」で、廣瀬修也教諭は、インクルーシブの視点で日常的に利用しているものとしてデジタル教科書のマイ黒板機能、MicrosoftTeams、インターネット検索、掲示板アプリ「Padlet」、電子図書館「Yomokka!」を挙げた。
「デジタル教科書は再生速度や文字色、背景色、サイズ、ルビふり機能を自分の好みで利用できる。授業の中心はTeamsだがPadletは自分の意見に他の児童からコメントがつくとすぐわかり、見やすいので利用している」と話した。
発達障害や不登校児童生徒に対する学習支援について研究している高橋麻衣子氏(早稲田大学)は、
「読み書きは緻密な作業。これに適合できないと不登校にもつながる。読む方法でしか入力できない、という環境が問題。重要なことは理解や思考であり、読み書きに困難を抱えているのであれば生成AIに助けを求めても良いのではないか。不登校児童生徒数は増えているが、読み書きの問題を解決することで改善される面もあるのでは。たかが読み書き、ちょっと助けて生成AI、ということがあって良いだろう」と話した。
「学習は子供にとってリアルな経験であり、考え方や行動が変容するもの。そのような学習の構築が教員の役割。生成AIはプロンプトの枠を超えない。生成AIは私たちに考えるきっかけを与えてくれた」
特別支援教育を研究している坂井聡教授(香川大学)は、
「知的障害がある児童が、生成AIに助けてもらえるような活用ができると良い。懸念点もある。端末などデジタルを利用することは『ずるいこと』と考える教員がいることと、しっかりとした学級経営がなければ、ICT利活用の良さを阻害する可能性がある面だ」と話した。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年12月2日号掲載