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教育ICT

「情報の時間」小・中学校で創設 再現性を高めるカリキュラムに 研究開発学校3年目の成果を報告~春日井市立出川小学校・高森台中学校

2024年12月4日

「情報の時間」解説書を作成し一部を公開

春日井市立出川小学校・同高森台中学校(愛知県)は、2022年度から4年間、文部科学省の研究開発学校に指定され、情報活用能力を育成する「情報の時間」の創設に取り組んでいる。

111日、春日井市教育委員会は研究開発学校研究発表会を開催し、全国から約800人が参加した。県でバスをチャーターして参加する教育委員会もあった。

2校は情報の時間を含む各教科の授業を公開。全体会では小学生4人、中学生3人が「情報の時間の設置により学びがどう変わったか」についてプレゼンテーションした。

 

「情報の時間」の効果 児童生徒がプレゼン

全学年で週1回、「情報の時間」に取り組んでいる

全体会ではGIGA前の学習環境、コロナ禍、そしてGIGAスクール構想1期をすべて経験している小学生4人、中学生3人が登壇。「情報の時間の設置により学びがどう変わったか」についてプレゼンテーションをした。

6年生の児童は、

「1学期に行ったピクトグラムの作成や招待状の作成を通して、わかりやすく伝えることが大事なこと、そのためにはなるべく短い言葉で表現すること、相手によって表現を変える必要性を学んだ」

問題解決学習が身についたことで学習のスピードが上がり、学びの質が高まった。他の教科の学習にも役立っている」と報告。

中学3年の生徒は、

「大きな目標に近づくために、日々の小さな目標を達成していくこと、そのために日々のふり返りで課題を分析する学び方が身についた

「最後に先生のまとめで終わるより友達のまとめを見て学習を進める方が面白い。学習を進めていて困った時はChatが役立つ。先生も、困ったときに解決するためのツールの1つ。この学び方で自分の好きなことや得意なことを見つけることができた。進路選択にも役立つ」と発表。

情報の時間創設の前後で自分のまとめ方がどのように変わったのかを示して説明する児童もおり、会場に衝撃を与えていた。

小学生と中学生が登壇し「情報の時間」で身についたことについてプレゼンした

 

【中1】データを利用して説得力を高める

中学校12学期の「情報の時間」では、課題「動画を作って高森台中学校の良さを小学生に紹介しよう」に14時間で取り組んでいる。

この日はデータを上手く活用して説得力を増すまとめ方を身につけることを目標としており、まず先輩が1年のときに作成した動画を見て良いところをChatに入力し皆と共有。次にNHK for School『表とグラフで表現する』などを見て気付いたこと発見したことをChatに入力した。Chatで意見や感想を入力することで「多い意見」「自分と同じ意見」「違う意見」がひと目でわかる。

次にデータを「表にまとめる」「並べ替える」「円グラフ化する」「棒グラフ化する」などの練習問題7題に取り組んだ。課題が完了した人、ヒントがほしい人がひと目でわかるようにGoogleスプレッドシート上に一覧化されている。

練習後は、自分が作成する紹介動画に説得力を持たせるようなデータを提供するためのアンケートを作成していた。アンケートは、「グラフ化を想定」して作成することもポイントの1つとして提示されていた。アンケート作成まで終わった生徒は、友達が作成したアンケートに答えていた。

気付きや発見は課題ごとにチャットに発信。多い意見、自分と同じ意見、違う意見がひと目でわかる

 

【中2】様々なグラフの表現と効果を理解

中学校22学期の「情報の時間」では、「中学生の実態のデータを分析して、レポートにまとめよう」に14時間で取り組んでいる。

  • 様々なデータを活用し、分析したことを根拠に自分の考えを表現する
  • 目的に応じてデータを収集し、整理分析を行う
  • 伝えたいことによって、データ分析の仕方を生徒が自ら決める

3つの力の育成が目標で、箱ひげ図を読む、全数調査と標本調査の使い分けを知る、無作為に得た結果を箱ひげ図で表現する、などで高森台中学校の生徒の情報を集めて分析することに取り組んでいた。

この日はNHK for School『グラフの読み解き』を視聴。批判的にグラフを読む練習を繰り返し行い、様々な種類のグラフの作成を練習していた。

 

【中3】小論文のスキル 段階的に身につける

中学校32学期の「情報の時間」では「主張を文章にまとめよう」に12時間で取り組んでいる。「自ら問いと仮説を立て課題を設定」「集めた情報を根拠にして小論文にまとめる」「生成AIを使って、論文の構成や添削などを効率的に行う」流れ。

この日は、小論文についての動画『誰でも書けるようになる小論文の書き方【2024年度版】』を視聴し、小論文についてわかったことをChatに発信することから始めた。生徒はChat上に「小論文は説得力が重要」「主張と理由、具体例が必要」など、理解したことを発信。「小論文の型」を理解した後、例文で並べ替え問題を解く。この問題を解いた後も、その感想や理解したことをChatで発信し合っていた。

興味深かったのは、「スライドを参考にして各自で小論文を作成する」過程だ。小論文の基となるスライドは、同校の教員が作成したもので、テーマは「少子高齢化をきっかけにした雇用の創出と子育て支援」。

一般に、小論文は「何について論じるか」を決めることに時間がかかる。スライドを基に小論文を書くことで、「小論文の書き方」という型を身につける練習が可能になる。書く内容については迷わなくてすむことから、生徒は集中して小論文を入力していた。

各自の小論文を友達同士で評価し合ってから自分の小論文を見直し。完成版をChatに送信し、個人でふり返りを行っていた。

 

工程を細分化して繰り返しスキルを高める

研究開発学校とは、現在の学習指導要領にはない新しい取組について試験的に研究する役割を担う。次の学習指導要領の改訂も視野に入れているものだ。

2校の週1回の「情報の時間」では、端末活用に慣れることから始まり、情報収集・分析や表現・発表の経験を何度も繰り返しながら徐々にスキル向上を図ることができるようにしている。

情報の時間のカリキュラム策定について高森台中学校の小川教諭は、

「まず1年目に、複線型の学びや問題解決学習をうまく進めている教員が、生徒のスキル向上のための取組をどのようなタイミングでどのように行っているかについて、意識的もしくは無意識的なものも含めて1年かけて収集した。それを整理し体系化して、学校全体で再現性を高めることができるようにした」と話す。

このスキル育成を体系化したカリキュラムについて、2年目はコアになる教員が実践。すると約半年後には子供のレポートの質が上がるなど一定の効果が見られたという。

3年目は学校全体で取り組んでおり、各教科の学びに役立っているという声が多く届いていると報告した。

9年間を見通した「情報の時間」の教育課程を作成

 

同校の長縄教諭は本カリキュラムについて、

「例えばプレゼンを1学期間かけて1本つくるのではなく、短時間で短いプレゼンを何回も制作してスキルを身につける構成になっている。それに加えて、良いモデルを見て自分の作品や友達の作品と比較すること、制作の後に対話し評価し合うことも質の向上に役立っている。論文作成スキルやインタビュースキルもすべて同様の構成」と話した。

出川小学校教務主任の阪井教諭は、

「情報活用能力という資質・能力育成のねらいや各教科における情報活用能力の発揮を常に意識して進めている。Chatにより共有のスピードは格段に上がった」と報告。

低学年担当の加藤教諭は、

低学年から何度も様々な方法で分類する経験を積み重ねている。2年生では1学期の終盤からタイピング練習も始まる」と話した。

本教育課程では、小学校21学期には「スライドを使って自己紹介をする」「スライドを使って自分だけの作品集を作る」「ローマ字入力」「端末持ち帰り」などに取り組み、2学期からはインタビューやふり返りの質を高めると共にプログラミング学習にも取り組んでいる。

当日の指導案と「情報の時間教育課程 暫定版」もオンラインに公開。

https://sites.google.com/school.kasugai.ed.jp/061101/

また、「これでわかる情報の時間解説書 2024年度版」も作成し一部をオンラインに公開している。

…・…・…

なお小学校における新教科「情報」関連の授業提案については研究開発学校として宮城教育大学附属小学校も取り組んでいる。今年度の研究開発学校研究発表予定は下記サイトへ。

https://curriculumdb.mext.go.jp/bc/kk/kk03/05_2

 

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年12月2日号掲載

 

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