文部科学省では、学校徴収金の徴収・管理は「基本的には学校以外が担うべき業務」としている。鶴ヶ島市立南中学校(埼玉県)では、教員の働き方改革の一環で、2024年度より学校徴収金システムを導入。5月より運用を開始した。導入の決め手になったのが「会計の明確化、事故防止、負担軽減」だったという。導入前の課題や導入後の効果、今後の期待について、藤田茂教頭と教務主任・ICT担当の新井大祐教諭に聞いた。
昨年度より教務主任となり、教員の働き方改革を進める役割を担うことになりました。真っ先に検討したのが学校徴収金のデジタル化です。学校徴収金管理を導入している自治体や学校の事例をいくつか聞いていたこと、自分がICT担当ということもあり、デジタル化の検討を始めました。
文部科学省では、学校徴収金の徴収・管理は「基本的には学校以外が担うべき業務」としています。当時、本校では、中学校1・2年生に対して、5月から夏休みを除く翌年1月まで毎月、1万円の学年費を現金で徴収していました。ここから教材費や宿泊学習費、修学旅行、各教科の副教材や実力テストなどに充当していました。そのため、1年のうち8か月間は毎月のように、生徒からの徴収や現金管理、銀行への入金など、徴収金に関する業務を学級担任や学年主任、教務主任や管理職が手分けして行う必要がありました。
毎月の集金日には1・2年生全員の徴収金は100万円以上と大金になりますので、2人体制で銀行に預けに行く手間も生じます。さらに業者への支払いのための計算、行事に参加しなかった生徒への返金作業も必要です。欠席などでその教材を使用しなかった生徒や実力テストを受けなかった生徒を除いて1人ひとりの負担金を計算する必要があり、時間がかかる煩雑な仕事です。
年度末の会計報告では、通帳の残高とこれまでの集金内容を整理して報告するため、数円でも数字が異なれば計算をし直す必要もあります。
現金徴収は、生徒、学校双方共に、紛失などの事故の懸念もあり、これらの問題を解決したいと考えました。
導入にあたり管理職や学年主任と情報共有をしながら検討を進め、まず、様々な学校徴収金の情報を収集して比較することから始めました。
キャッシュレス化する仕組みはいろいろありますが、学年主任や会計担当者、教頭の負担になっていた年度末の会計報告と、それぞれの業者への支払い作業から解放される仕組みとしたい、と考えていたところ、「業者への支払い業務が自動化される」「学校を介さずに保護者が商品を購入できるので、各学年で学期ごとに行っていた会計報告書の作成が不要になる」仕組みは「エデュケーショナル 学校モール」のみだったことから、本仕組みを導入することとしました。
学校徴収金については、数円単位で数字を合わせる必要がある会計報告や会計監査が最大の難関でしたが、これが不要になることは大きな決め手になりました。
学校モールでは年度当初の定額利用料金のほか、振り込み1回ごとに手数料が必要です。そこで徴収をこれまでのように年8回ではなく、回数を減らすこととしました。現在、1年生は年3回、2年生は年4回を口座振替で徴収しています。
遅延した場合は学校モールの担当者がメールやSNSで通知し、2週間以上入金がない場合は電話をしてくれます。知らない番号から届く電話に出ない保護者もいますが、着信した電話番号で検索すると『学校モール』と出るため、折り返す保護者もいると聞いています。学校モールの導入により、子供が現金を学校に持ってくること、学級担任が現金を徴収する仕事、そして銀行に預けに行く仕事がなくなり、事故防止や安心感につながっています。
6月下旬に初めての引き落としがあり、ほとんどの家庭で問題なく進めることができました。
今年度より学年費は年1回(5000円)、学校モールを介して集金するだけになりました。学級担任の意見もあり、細かい現金が必要な際に対応できるようにしました。余剰分は卒業アルバム代に追加する予定です。学校モールの仕組みが定着することで、将来的には学年費の徴収がすべてなくなる可能性もあると考えています。
導入の際はいくつかの課題もありました。
学校モールは保護者がふだん利用している銀行口座を利用できますが、口座登録の書類作成を保護者に依頼する必要があります。初めての試みのため、1・2年全員の登録が必要で、保護者からの反対はなかったものの、これまでとは異なる仕組みに手間取り、口座登録がスムーズに進まないこともありました。これについては、次年度からは登録作業が新入生のみになり、より円滑に進めることができると考えています。
本仕組みでは、保護者と教材販売会社が学校モールを通してやりとりするため、業者にも学校モールに登録を依頼する必要があります。販売会社からは「最初は不安があったが、毎回集金に行く必要がなくなり、便利になった」という声が届いています。
初年度ということもあり、教務や教頭については、これまでと異なる調整や準備などの業務は生じますが、学級担任や学年主任、保護者や生徒の負担は減っています。各学年で行っていた細かい通帳管理もなくなりました。
学校徴収金については学校単体ではなく、地域や市単位でできるとさらに利便性が高まるのではないでしょうか。本市においては、校長会で学校徴収金システムの導入について、話題にのぼっていると聞いています。導入後の本校の状況は今後、市のPTA連合にも報告していく予定です。
学校での現金集金や紙請求書の事務処理を不要にし、支払い業務を自動化。入金状況もリアルタイムで確認できる。登録済みの教材であれば1点から再販も可能だ。
教材の購入案内用紙も自動作成して販売や集金のタイミングで管理画面からダウンロード・印刷して保護者に配布することができる。未払いについての保護者への連絡や販売業者への入金・会計報告もPC画面上で完結できる。保護者の電話対応窓口も設置。保護者のスマートフォンへの通知は今後対応予定。
▼詳細=https://info.gakko-mall.com/
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年12月2日号掲載