10月16日、第113回教育委員会対象セミナーを札幌市内で開催。運用から1年が経過したゼロトラスト環境「奈良市モデル」、北海道における1人1台端末活用、個別最適で協働的な学びと次世代の教員養成、情報活用能力育成と校務DX、ふり返りと自己調整学習の取組が報告された。
北海道教育大学附属函館中学校はICTやCBTを活用して学習履歴を蓄積し生徒の自己調整学習に活かしている。今年度は学校生活にも焦点を当て、全教科で自己決定の場面を設定するなど更なる研究を進めている。
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本校では今年度、生徒の自ら学習を調整する力の育成を目指し、学校生活全般と各教科の学習、2つの視点でふり返りの蓄積とその利活用に取り組んでいる。
学校生活全般のふり返りとして週1回の「SR(Self-Regulation)フォーム」と月1回の「DSST(デジタル・ソーシャル・スキル・トレーニング)」を実施している。
SRフォームは毎週金曜日に1週間のふり返りと次週の見通しを考えるもので頑張った教科や行事、今後頑張りたいことなどを5分程度で簡単に記入。見通し、実行、ふり返りという自己調整のサイクルを促している。
DSSTでは1日の時間の使い方を考えたり、ストレスを感じた場面をふり返ってストレスにブレーキをかける方法を考えたりして、メタ認知力の育成を図っている。
いずれの記録もGoogleサイトの生徒別「学習履歴サイト」に蓄積している。Classroomでは情報が下に流れていき、視覚的に見づらく探しにくいが、Googleサイトは一覧で表示されるため視覚的にわかりやすく、整理しやすい利点がある。
学習履歴サイトには教科の学習履歴や教科専用サイトのリンク、学校行事の記録や総合的な学習の時間の成果、キャリアパスポート、学級の個人目標などを集約。生徒はテンプレートを元に自由にカスタマイズしている。サイトの活用促進を図るため、各自のサイトを相互評価させ学習履歴の残し方や活用方法について交流させたところ、よりよい活用方法を模索するようになった。
各教科の学習では、ふり返りの記述の質を高めるために、全教科で必ず単元の中に自己選択・自己決定ができる場面を設定することとした。学習の順序、課題、方法、形態の4項目を複数組み合わせて選択できるようにすることで生徒が考える時間を増やす狙いだ。
私の担当する数学科では個人の計画表を作成しグループ単位の自由進度学習に取り組んでいる。教材(動画、ドリル、教科書、ワークシートなど)と学習形態(個別、協働)を選択し、授業後に自己評価とふり返りを記入する。始めに教員が一斉授業で説明してから、グループごとの自由進度学習を展開。進度表を作成して全体で共有しており、グループ内で助け合いながら学習している。
これにより、ふり返りの質が大きく変化した。今まではできたこと、できなかったことのふり返りが多かったが、本実践を通して、「個人学習でわからない部分がはっきりしたので明日は協働で学習したい」「わからなかった部分は家で動画教材を見る」など、学習を自己調整する内容に変わってきた。
自己決定や自己選択の場面を設定すると生徒は自ら考え選択していくようになる。10分程度でもよいので日々の授業でこうした場面を積み重ねることが、自ら学習を調整する力の育成に効果的だと感じている。
【第114回教育委員会対象セミナー・札幌:2024年10月16日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年11月4日号掲載