10月16日、第113回教育委員会対象セミナーを札幌市内で開催。運用から1年が経過したゼロトラスト環境「奈良市モデル」、北海道における1人1台端末活用、個別最適で協働的な学びと次世代の教員養成、情報活用能力育成と校務DX、ふり返りと自己調整学習の取組が報告された。
札幌市立発寒東小学校は授業DXと校務DXを両輪で推進。子供と教員双方の情報活用能力を育成することが働き方改革の軸だと尾形教務主任は話す。
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子供たちは端末を日常的にツールとして使っている。登校後、Classroomで連絡事項を確認し担任からの簡単なお題にコメントを返した後、各自ドリルや読書に取り組む。これを1~6年生の全学級で行っている。コメントでのやりとりが日常化することで入力スキルも向上し子供の意外な姿が見えてくるというメリットもあった。
宿題もClassroomで配信。自主学習の取組をコメントに書き込ませたところ、互いの取組が可視化され励みになったようだ。委員会やクラブ活動も打ち合わせが効率的になり、認め合いや励まし合う姿が見られるようになった。
デジタルドリルは市で導入されているものに加え学校教材費で2種類配備。先取り学習や復習、宿題にも使いやすい。学習者用デジタル教科書は国から配備された英語・算数と学校予算で国語も配備している。
夏休みの日記や課題もデジタルに移行。オンライン上で子供の日々の様子が分かり、記入していない子など気になる子も早急に見つけることができた。全校で新聞づくりにも取り組んだ。身の回りの疑問から「はてなのタネ」を探し追究の方法を考える過程は端末で行い新聞に手書きでまとめる。ご当地マンホールや動物の爪など多様な発想が生まれていた。
生成AIも授業で活用した。プログルラボ「みんなで生成AIコース」は子供の入力を教員が確認でき、使う時間も限定できる。小学生段階で生成AIを自由に使わせるのは難しい面もある。制限のある環境で安全に失敗できる経験は大切であると考えている。
6年生社会科で札幌市の除雪の課題とその解決策について生成AIと共に考える授業を行った。正解のない問いを考える時に思考の壁打ち相手や考えをブラッシュアップするためのツールとして生成AIは効果的だ。
情報活用能力を育成するためのポイントは日常的な端末活用を前提に、まずは課題解決型の授業に取り組むことだ。さらに現状を可視化して課題を共有し学校評価も上手く活用する。最も重要なのは良質なアウトプットの場面を作ることだ。
初めに「情報活用能力ベーシック」(一社・日本教育情報化振興会)を用いて定義づけをした。基本となる5つの学習プロセスを見て教員は「意外と普通の授業の流れ」であると感じたようだ。
次に本校の現状を可視化した。昨年度より情報活用能力診断ツール「ジョーカツ」を導入している。各種アンケート調査、学力調査等のデータもあわせて分析したところ課題設定力の弱さが課題として見えてきた。
教員間で課題を共有した後は全校の取組を「方針化」していく。本校では子供が課題を見つけて追究する道筋を作るために夏休みの課題として新聞づくりに取り組むこととした。学校評価もワークショップ型として校内全体で討議しており昨年度は総合のカリキュラムの見直しを行った。
Chatの活用も進んでいる。教員同士の即時連絡ツールとして学年や校種を越えて様々なグループができており、朝の出欠確認もChatで共有。携帯端末でも利用できる仕組みのため即時性が大きく向上した。校内の連携だけでなく中学校区内の小中連携部会やICT担当者、行事に関する部会、学校運営協議会など地域連携も盛んだ。
学習eポータルの活用により配布物は完全ペーパーレス化した。学級通信、アンケート、時間割など児童・保護者への連絡は全て学習eポータルで配信。教員への連絡も同様だ。また教員のみアクセスできるストレージで指導案等を共有しておりデータ共有のハブとしても機能している。
回覧文書は「DocuWorks」でデジタル化した。担当教員へデータで振り分けでき押印はデジタル判子で行っている。
昨年度からデジタル採点システムも導入。採点時間が大幅に短縮された上、回答が一覧化されるので採点の揺れなどが判別しやすく評価のずれの不安を軽減できた。
【第114回教育委員会対象セミナー・札幌:2024年10月16日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年11月4日号掲載