10月8日、第112回教育委員会対象セミナーを仙台市内で開催。次世代校務DX環境の県域による共同調達や小中学校における生成AIの授業活用、デジタル田園都市国家構想交付金の教育利用、学習者の主体授業づくり、教科横断的な学びに向けた授業改善の取組が報告された。
仙台第三高等学校は普通科と理数科を擁するSSHの指定校だ。「三高型STEAM教育」により教科横断的かつ探究的な学びに取り組んでいる。
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本校では教科横断的な学びによって課題解決能力を育み、科学的な探究にも活用できる授業づくりのため「三高型STEAM教育」を開発して、理数科だけでなく普通科にも教科を融合した学校設定科目「SSデータサイエンス」を設置しPBL型の活動を展開している。
通常の授業でも教科間の交流を行っており、これらの授業の開発・実践を組織的に行うため全教員が所属する「SSH・授業づくり研究センター」を校内に設置し第2の校務分掌として学科、学年を越えて協働している。
こうした授業にはICT活用が欠かせない。そこでICT活用について教員同士が教え合い学び合う「ちょこ研(ちょこっと研修)」を不定期で開催。教頭や司書など全職員が自由に参加できる。毎月の職員会議でも資料をデジタル化して時間を短縮し空いた時間で研修を実施している。
毎年12月に開催する「授業づくりプロジェクトフォーラム」では全国の顕著な実践例をもつ教員を招聘して授業をしてもらっており、大きな刺激を受けている。
国語科では京都の立命館宇治高校と遠隔合同授業を実施している。教室内の学びに留まらないインタラクティブ型授業の取組だ。生徒は文化の異なる地域の高校生と意見交換をして自分の考えを深めている。
今年度の1年生は昔話の方言翻訳に取り組んだ。評価の観点は事前に行ったFormのアンケートを因子分析して身につけさせたい資質・能力を定義。物語の世界観や表現の広がり、地域の文化や方言の深い理解、自分の地域の文化や歴史の深い理解と新たな発見の項目で向上が見られた。
学校設定科目「SS(理科)データサイエンス」は情報と数学を融合している。統計分野を扱った授業では数学科教員から統計について学んだ後、より実践的に学ぶため民間データ分析会社、百貨店の協力の下、宮城大学の支援も受けながら本格的なデータ分析に取り組んだ。
民間データ分析会社からデータサイエンスの講義を受け、百貨店から提供された実際の入店客数のデータを使って、来客が少ない日の入店客数を平均並みに増やす手立てを考える学習に取り組んだ。
生徒は気象データとの相関関係などインターネット上のデータも活用しながら傾向を分析。分析方法やグラフ作成など学んだ内容はFigJamで共有し自由に参照できる。スライドにまとめて発表した後、質疑応答やFormのふり返りシートを参照して再検討し最終提案を行った。
ビッグデータを利用した実践は根拠付けや論理的思考を育み、探究学習の質を高めることにつながった。
生徒の情報活用能力の変容を把握するため、1・2年生を対象に情報収集・現状把握・目標設定・仮説設定・分析検証・情報発信の6項目で調査を行ったところ、全項目で普通科、理数科ともに向上が見られた。また多くの生徒が「汎用ツールを活用して自分の考えをわかりやすく整理・まとめることができるようになった」と回答。校外発表に挑戦する生徒も増え、主体性が向上している。
【第113回教育委員会対象セミナー・仙台:2024年10月8日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年11月4日号掲載