10月8日、第112回教育委員会対象セミナーを仙台市内で開催。次世代校務DX環境の県域による共同調達や小中学校における生成AIの授業活用、デジタル田園都市国家構想交付金の教育利用、学習者の主体授業づくり、教科横断的な学びに向けた授業改善の取組が報告された。
宮城教育大学教職大学院の菅原特任教授は端末を活用した子供主体の学びについて、学校DX戦略アドバイザーとして携わっている山形市立金井中学校の事例を基に講演。ふり返りの質の向上が授業改善の手がかりとなるのではないかと話した。
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山形市立金井中学校は生徒がICT利活用力を発揮して学びを選択したり自己調整したりする生徒主体の学びに向け授業改善に取り組んでいる。
授業改善の方向性は生徒の声から見出した。「意見を出し合える授業は楽しいしわかる」「生徒同士で解決する話し合いの場面をつくってほしい」と生徒は主体的に学びたいと考えている。
同校は生徒のICT利活用力に課題を感じており、今年4月、クラウドを活用した授業について研修を実施した。相互参照や協働編集ができるクラウドの特性と、ICT利活用力といった生徒につけたい力との関係を整理し、具体的な活動場面が結びつくことで様々なチャレンジが始まった。
明確なビジョンの共有と授業改善への熱意があるため変化が速い。9月の公開授業では5教科で生徒主体の授業を展開していた。
理科では「目には見えない『気体』の種類を特定するには」と課題設定し、単元前半で身の周りの気体の性質など基礎的な知識を学習。単元後半の実験ではジグソー学習を取り入れた。各自で実験方法を選択し実験結果と考察を端末で共有、互いに参照しながら未知の気体を特定していく。
生徒はこれまでの学習内容をふり返り様々な視点から多面的に課題解決に迫っており、生徒の知的好奇心を刺激する課題設定により主体的な学びを実現していた。
数学科では自由進度学習に取り組んだ。授業動画の視聴やAIドリル、友達と相談するなど生徒の活動は様々。生徒が学び取るための手引きを用意し学習計画表をもとに自律的に学習を進めるための準備がなされていた。各自の取組状況は進度を横軸、個別・協働を縦軸として座標軸上で示し教員・生徒が確認できるようにしていた。
授業動画は教員が作成しクラウドで共有。繰り返し視聴でき、全て見なくともよく、スクリプトで文字でも確認できる。教員は視聴状況の分析をして「別解の視聴数が少ない」と改善に活かせるデータを得ていた。
授業後、生徒に意見を聞くと、動画やドリルでは学びにくい子もいることが分かった。生徒が自分で課題をもって教員に教わりたいと考えるのも主体的な学びといえる。多様な学びのスタイルを提供することが肝要だ。
同校は授業改善の成果の判断材料として独自のふり返りシートを作成して生徒のふり返りを蓄積している。どのように学んだか、次の改善にどう活かすかという視点でふり返ることで、自分の得意な学び方や改善方法が見えてくる。シートはクラウドで共有。教員がフィードバックしやすく、生徒同士も相互参照できる。生徒の学び方への意識の変化を検証しているところだ。
NEXT GIGAにおいてこれまで以上に学習者主体の授業に向かっていく中で、学び方をいかに子供に獲得させていくかが重要になる。
【第113回教育委員会対象セミナー・仙台:2024年10月8日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年11月4日号掲載