10月8日、第112回教育委員会対象セミナーを仙台市内で開催。次世代校務DX環境の県域による共同調達や小中学校における生成AIの授業活用、デジタル田園都市国家構想交付金の教育利用、学習者の主体授業づくり、教科横断的な学びに向けた授業改善の取組が報告された。
デジタル田園都市国家構想交付金の教育分野での活用について角田歩参事官補佐が説明した。
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石破内閣総理大臣は所信表明で地方創生の交付金の倍増を目指す方向性を示した。デジタル田園都市国家構想交付金は今年度、当初予算で1000億円、補正予算で735億円を確保しており、来年度は当初予算の増額の可能性がある。
デジタル実装タイプの予算は例年補正予算で確保しており、今年度は360億円が組まれている。来年度もしっかりと予算を確保できるよう進めているところだ。
昨年度は11月頃に説明会を行い、2月中に申請締切というスケジュールだったが、今年度は衆議院解散もあり従来よりも遅れる可能性がある。
なお交付金の名称も変更となる可能性があるが、内容や使いやすさは引き継いで進めていく想定だ。
デジタル実装タイプの中でも教育分野で活用されている「優良モデル導入支援型TYPE1」の申請要件は3つ。単年度で実装できること、地域住民にメリットがあること、他の地域で既に確立されたサービスの横展開であることだ。
教育分野ではAIドリルやオンライン学習環境整備での活用が多い。
岐阜県恵那市はAIドリルを導入して個別最適な学びを推進。さらにデータでクラスの習熟度や傾向を把握して授業設計に活かしている。KPIはAIドリルの利用人数と全国学力・学習状況調査結果の伸びとして成果を測っている。
滋賀県栗東市はクラウド型の授業支援システムにより不登校の児童生徒の学びを保障。校外からも授業に参加でき相互参照ができる環境を整備した。KPIはアクセス頻度と児童生徒の満足度に設定。
これらと同様の整備は交付金の対象になる可能性がある。
校務支援システムの導入に本交付金を活用したい場合は留意すべき点がある。
計画書には第一に子供や保護者といった住民のメリットを明示し、KPIも子供や保護者の評価を組み込んで設定することだ。教職員の負担軽減を課題に設定してしまうと交付金の主旨に沿わない。業務効率化はあくまで副次的な効果とする必要がある。
愛知県知多市は保護者との連絡を電話や紙で行っていたため、紛失が多く手間がかかることを課題とした。保護者からも手軽な連絡機能のニーズが寄せられていたという。その課題解決の手段として保護者との連絡をシステム化するために校務支援システムを導入するという流れで計画書を作成。KPIには保護者の満足度を設定している。
計画書策定のポイントは、これまで述べたように子供や保護者、地域住民の課題解決に資するものであり、具体的な効果を明示すること、適切なKPIを設定することだ。広報など活用促進のための体制づくり、次年度以降の計画を明確にする、PDCAサイクルを整えるなどの点も留意していただきたい。
【第113回教育委員会対象セミナー・仙台:2024年10月8日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年11月4日号掲載