10月8日、第112回教育委員会対象セミナーを仙台市内で開催。次世代校務DX環境の県域による共同調達や小中学校における生成AIの授業活用、デジタル田園都市国家構想交付金の教育利用、学習者の主体授業づくり、教科横断的な学びに向けた授業改善の取組が報告された。
早稲田大学教職大学院の田中教授は小中学校における生成AI活用の実践事例を紹介。教科の知識を活用する学びに生成AIを使うことが効果的だと話した。
著書『教師のためのChatGPT活用術』(学陽書房)で指導案や教材活用、実践事例を紹介している。ポータルサイト「AI教育研究所」でも指導に活用できる資料や事例を掲載=https://ai-education.jp/
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東京都世田谷区のある小学校は、6年「図工科」で画像生成AI「Adobe Firefly」を使った鑑賞授業を行った。子供たちはそれぞれの思い描く「美しい風景」について色や形、造形的な美しさの観点から入力するキーワードを考えて画像を生成。「桜」「川」「青い空」で春の景色を表現するなどだ。
キーワードは班で話し合って工夫したり、改善したりしていた。生成した画像はカラープリンタで印刷し、互いに鑑賞し合って相互評価を行った。授業冒頭には注意点として残酷な言葉や下品な言葉を入力しないことを確認していた。
神奈川県の私立小学校では、3年「社会科」の公害の授業で、調べ学習に生成AIを活用。教科書や資料集、インターネットで四大公害病について調べた内容をもとに、生成AIと対話し新たな観点を得ることでより深く学んでいた。
年齢制限があるため班に1アカウントを配布し、子供たちが考えたプロンプトを教員が入力して使用。さらに「小学生でもわかるように説明して」「ステップバイステップで考えて」とプロンプトを工夫していた。まとめのスライドに使う画像も生成AIで作成。またルーブリックを子供と共有し、自律的に課題解決学習を進められるようにしていた。
愛知県のある中学校は、2年「外国語科」で、生成AIを活用して英作文を推敲した。10年後の自分に向けて中学生の時に抱いた夢が実現できているかを尋ねる手紙を英語で書くという内容だ。
生成AIは文法や綴りの誤りを指摘するだけでなく、カスタム指示機能を設定すると「どのような努力をしたのか」などの英作文に取り入れるべき観点別に点数を回答し、例文も提示してくれる。
さらに教科書準拠の語彙リストなども読み込ませ、内容を膨らませるためのアドバイスをするよう設定して生徒の基礎的・基本的な知識の活用を図った。事前にAIリテラシー教育を行っており、表現の工夫や内容の深化のために生成AIの回答を自分で取捨選択したり判断するよう促していた。
生成AIが1人1チューターとして丁寧に個別指導をしてくれるため、英語が得意ではない子も真剣に取り組んでおり、ルーブリックをもとに自己評価をしたり、相互にアドバイスをしたりもしながら英作文を推敲していた。
新潟市のある中学校は、1年「総合的な学習の時間」で行った福祉学習のまとめを「はがき新聞」で制作し、その推敲・改善に生成AIを活用した。
生徒は制作したはがき新聞をPDFデータで教員に送付。それを教員が生成AIに読み込ませて、誤字や脱字の訂正、観点別の点数と総合評価を依頼すると、100枚を超えるデータ量でもわずかな時間で1人ひとりの添削ができる。さらに、あらかじめ福祉の情報を提供しているWebサイトなどを読み込ませているため知識をもとにアドバイスも返してくれる。
生成AIの講評だけでなく生徒同士でも相互評価をして二重のふり返りを行い、より良いはがき新聞を作ろうと取り組んでいた。
【第113回教育委員会対象セミナー・仙台:2024年10月8日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年11月4日号掲載